昨日の続き。
本書は、Amazon レビューにあったように、凌雲閣についての概要を手っ取り早く知りたいと云う人には不向きかも知れない。その点は「細馬宏通『浅草十二階』青土社、二〇〇一」として度々言及されている細馬宏通の著書を参照した方が良いかも知れない。
・細馬宏通『浅草十二階 塔の眺めと〈近代〉のまなざし』二〇〇一年六月一日 第一刷印刷・二〇〇一年六月八日 第一刷発行・定価2400円・青土社・299頁・四六判上製本
この細馬氏のインターネット上の活動については、本書にも言及がある。77頁、第一章の最後の脚註に、
(117)細馬宏通氏は、著書刊行の後の何/年かの間、インターネット上で喜多川/さんの時代とまったく異なる速さと広/さとを備えながら、どこか本質的に等/しいのではないかと思えるような熱中/の交流を、多くの研究者たちと生みだ/した。その交流のなかから発見され、/共有された新事実も多い。
とある。但し巻末の「索引」には(昨日引用したような事情で)細馬氏の名前はないので、どのくらい言及されているかは俄に分からない。
この第一章であるが「あとがき」の409頁3~15行めに執筆に至る事情や初出との異同について触れている。6行めの途中まで抜いて置こう。
第一章のもとになったのは、文学研究の雑誌に寄稿を依頼された論考「都市生活の光と蔭――浅草十二階が与えた視/覚と創造力」[『文学』第一四巻第四号、二〇一三年七・八月号:一六六-一八六]である。掲載時に省略した論点などを復活/させるとともに、その後に気づいたり入手したりした資料をつかって、大幅に書きかえている。先行する吉見俊哉の浅/草論や、細馬宏通の十二階研究には多くを学ばせてもらった。‥‥
そうすると細馬氏の本には、既に次の増補新版が出ていたはずである。何故そちらを挙げていないのだろうと思った訳でもないのだが、本書とともに細馬氏の本の初版と増補新版も借り出していた。
・細馬宏通『浅草十二階 塔の眺めと〈近代〉のまなざし(増補新版)』2011年8月25日 第1刷印刷・2011年9月10日 第1刷発行・定価2400円・青土社・326頁・四六判上製本
詳しくは改めて比較の機会を作った際に触れることとしよう。――とにかく、263頁までは増補新版でも変わりないようだから、ここに佐藤氏が「二〇〇一」として増補新版を挙げなかったのは、適切な処理だったと納得出来た。しかしそうすると、「増補新版のためのあとがき」には「浅草十二階計画」の掲示板に情報を寄せている人々への謝辞があるのだけれども、それは増補新版のごく一部にしか反映されていないことになる。どのくらい反映されたのか、されなかったかの検証は増補新版と「浅草十二階計画」との比較が必要になって来るから、やはり今後凌雲閣についてより突っ込んだ言及を私がすることになったときに果たすこととしたい。(以下続稿)