瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

村松定孝「私と山梨の近代作家」

 ここで村松氏と中村星湖一家との関連を見ていくつもりで、村松氏の『言葉の影像 鏡花五十年』の「卓話」の章(187〜245頁)に収められた「山梨ゆかりの作家――樋口一葉、中村星湖、深沢七郎」(213〜222頁)を参照して、ふと巻末の「収録随筆初出一覧」に

山梨ゆかりの作家――樋口一葉、中村星湖、深沢七郎(平成五年一月一九〜二八日「山梨日日新聞」)

とあるのを見ているうち、たまたま他の新聞を調査する予定があったので、ついでに「山梨日日新聞」の縮刷版を確認しておこうという妙な気持ちを起こした。このブログはもっと気楽に書き流すつもりだったのだが、全くそうなっていない。
 さて、「山梨日日新聞縮刷版」平成五年一月号を見ると、1993年(平成5年)1月19日 火曜日 第40470号の(9)面「文化」面に、村松定孝「私と山梨の近代作家 ◇1◇」が掲載されていた。
 次に、冒頭と本題の「樋口一葉」の初めの部分を示しておく。

 今回、山梨ゆかりの作家で、明治大正昭和の文壇に足跡を残した人々十名を選んで、アトランダムに、そのポートレイトを描かんとするのが、この連載の目的である。しかし、列挙する作家の多くは、すでに研究者の間に言いつくされており、それらの作家については、その遺族あるいは本人に筆者が接した際の印象を述べてみることにした。筆者自身、もう余命いくばくもなき年齢であるから一種の自叙伝の形をなすものとして書き止める次第である。
       ◇
 甲州*1ゆかりの近代*2作家といえば、まず第一に樋口一葉(本名*3夏)の名がうか*4。が、……


 冒頭の一段は『言葉の影像』にはない。随筆集に収録するということで、言わずもがなとて削除したものであろう。続いて本題に入るが、異同を注記しておいたように『言葉の影像』では「卓話」スタイル(敬体)に書き改めている。初出では常体である。但し、内容の加除はないようだ。
 この「樋口一葉」では、遺族訪問のことが書かれているが、『あぢさゐ供養頌』と齟齬している。このことについては後日取り上げたいと思う。
 1993年(平成5年)1月20日 水曜日 第40471号の(12)面「文化」面に、「私と山梨の近代作家 ◇2◇」として「中村星湖」。ちなみにこの号の(1)面トップは「皇太子さま 小和田雅子さん/ご婚約 正式決定」で8〜11面「皇太子さまご婚約特集」となっているためこの号のみ掲載頁が違っている。この他社会面などにも関連記事が掲載されている。
 単行本には副題にもあるように3人しか収録されていないが、新聞連載は10人で、以下の通りである。
   1993年(平成5年)1月21日 木曜日 第40472号(9)面「文化」面「◇3◇」前田 晁
   1993年(平成5年)1月22日 金曜日 第40473号(9)面「文化」面「◇4◇」望月百合子
   1993年(平成5年)1月23日 土曜日 第40474号(10)面「文化」面「◇5◇」村岡花子
   1993年(平成5年)1月26日 火曜日 第40477号(9)面「文化」面「◇6◇」石原文雄
   1993年(平成5年)1月27日 水曜日 第40478号(9)面「文化」面「◇7◇」青柳瑞穂
   1993年(平成5年)1月28日 木曜日 第40479号(10)面「文化」面「◇8◇」深沢七郎
   1993年(平成5年)1月29日 金曜日 第40480号(9)面「文化」面「◇9◇」熊王徳平
   1993年(平成5年)1月30日 土曜日 第40481号(9)面「文化」面「◇10◇」野尻抱影
 新聞連載なのでそんなに詳しくはない。「収録随筆初出一覧」は休載期間を無視して日付が違っているし、単行本では著名な3人に絞っている訳で、それで10日間連載した訳でもない。収録しなかった7人の分も何かの参考になろうかと思い、ここに名前だけでも示しておいた。この、単行本にない回想もそれなりに興味深い。それから「早稲田慶応」以外の私立大は「国立大の植民地」だとかの余談も。

*1:単行本「山梨」

*2:単行本ナシ

*3:単行本ナシ

*4:単行本「びます」