瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

蓋にくっついた話(7)

 前半を並べてみる。

【A】まりずきなむすこ有。そのをやぢ殊外きらい、町人のまり遊、をごりのいたりと、だん%\ゐけんせられけれど、*1
【B】まりずきなむすこ有。をやぢ、はなはだきらい、町人のまりのけいこ、むやくのいたりと、だん/\異見して、*2
【C】まりにはまつた息子へ、親父、遠廻しの異見。いかな事聞入れねば、ある時よびつけ油をとりて、九損一徳、何のやくにたゝぬ芸、向後ふつつりやむべし。鞠があれば蹴たくなる。そのまり、うつちやつて仕廻へといふに、*3
【D】むすこ、まりをすいてける。おやぢ、気にいらずして、大きに呵て曰。そも/\其まりといふ物、貴人高位の遊ばすもので、此方どもがもてあそぶものじやおじやらぬ。九損一徳とて、腹のへるばかりが徳じやげな。それがなんのとくなこと。九損一そんといふものじや。度〻やめろといふに、兎かくやまぬそふな。まりがあればこそ、けたくなる。いつそうつちやつてしまへと、にが/\しくいへば、*4
【E】おやぢが椽さきへ出て、ヱヽあいつめが九損十とくといふて、何の益のないものじやほどに、まりはよせ/\といふに、*5


 【A】と【B】は同じ本に載るが、殆ど同じである。【C】に「九損一徳」が持ち出され、以後に継承される。【D】は懇切丁寧に状況を説明している。【E】は実は後半部分しかない。後半に回想する形で前半の要素が簡潔に説明されている。(以下続稿)

*1:振仮名「あり・ことのほか・ちよにん・あそび」。

*2:振仮名「あり・ちよにん・いけん」。また原文「きららい」衍字。

*3:振仮名「まり(題)・むすこ・おやぢ・とをまは・ゐけん・きゝい・とき・あふら・くそんいつとく・なん・げい・きやうこう・まり・け・しま」。

*4:振仮名「ばこ(題)・き・しかつ・いわく・きにんかうい・くそんいつとく・はら・とく・くそん・たび/\・と」。

*5:振仮名「まり(題)・ゑん・そん・ゑき」。