瑣事加減

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鎌倉の案内書(05)

 奥富敬之『鎌倉歴史散歩』(2001年8月31日初版第1刷発行・定価2500円・新人物往来社・302頁)

鎌倉歴史散歩

鎌倉歴史散歩

 奥富敬之『もっと行きたい 鎌倉歴史散歩(新人物文庫57)』(2010年2月7日第1刷発行・2010年2月26日第2刷発行・定価762円・新人物往来社・446頁)
もっと行きたい 鎌倉歴史散歩 (新人物文庫)

もっと行きたい 鎌倉歴史散歩 (新人物文庫)

 奥富敬之(1936.9.2〜2008.7.7)は日本中世史家で日本医科大学教授だった。文庫版の奥付の前の頁(頁付なし、447頁に相当)に「本書は二〇〇一年八月新人物往来社より刊行された/『鎌倉歴史散歩』を改題し、再編集したものです。」とある。
 いつも思うのだが、文庫版を出すに際して改題する必要はあるのだろうか。特に著者没後の改題は、著者本人の意志に無関係だろう。本書は「歴史散歩」コースを紹介するものではなく、「鎌倉」の「歴史」を「原始の頃」から「鎌倉幕府の滅亡」まで辿りながら、関連する史跡を紹介する、という体裁で、実際に歩くためのガイドというより、ある程度現在の鎌倉の地理に通じた人が読んで、鎌倉の歴史への理解をより深める、といった内容である。ガイドブック類に掲載されている(観光地として有名な)寺院を網羅している訳ではなく、マイナーな史跡も少なくないし、コースが示されていないから、行くにしても自分でプランを立てないといけない。――理解が深まればこの本でも「もっと行きたい」と思うだろうが……、という訳で、この標題の変更には、正直あまり賛成出来ない。
 とにかくこの断り書に、改版であることが明示されているので、以下、両者を比較してみたい。
 単行本のカバーには、文字は表紙と背表紙に標題と著者と版元があるのみで、折返しも白で何も印刷されていないが、文庫版は表紙の帯のように見える部分に宣伝文句が入り、裏表紙には「源平の争乱と鎌倉時代を“体感”する古都探訪」と題する詳しい説明文がある。裏表紙折返しには「新人物文庫好評既刊」が29点列挙され、表紙折返しには上部「著者紹介」左下に2行に「表紙カバー写真/釈迦堂の切通し カバーデザイン/鈴木正義」とある。著書紹介は単行本の奥付(上部)にあるものよりも簡略。釈迦堂切通しは単行本カバー表紙の左下にも同じ位置から撮した別の写真が載る。
 単行本では「■海の底にあった市街地」から「■鎌倉幕府の滅亡」まで、時代順に27の章に別れているが、章番号は附されていない。一方、文庫本では「一 海の底にあった市街地」から「二十七 鎌倉幕府の滅亡」まで章番号が附され、さらに一〜四章が「第1部 古代の鎌倉と源平争乱」、五〜十二章「第2部 源頼朝の鎌倉入部」、十三〜二十三章「第3部 北条氏の勢力伸長と鎌倉の発展」、二十四〜二十七章「第4部 得宗専制と幕府の滅亡」と部立されている。
 本文はたぶん書き換えられていないと思うのだが、挿入写真が違う。最初の方を比較した限り、殆ど全て差し替えられているようで、同題の写真であっても同じではない。試みに文庫版では「第1部」となっている最初の4章を比較してみよう。(以下続稿)