瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

中島敦の文庫本(18)

旺文社文庫(5)
 さて、本文には違いはないようだが、巻末の解説・エッセイの「筆者紹介」のうちの、氷上氏(169頁)と井上氏(172頁)は同文だが、岩田氏のそれ(178頁)は相違している。この岩田氏の「筆者紹介」については、前回触れておくべきだったのだが、うっかりしていたので、ここで確認して置きたい。昭和59年版を見るに、

筆者紹介――一橋大学教授、英文学者。一九一〇年、横浜に生まる。中島敦の、特/
  に横浜時代の親友。英国スティーブンスンクラブ会員。著書「『光と風と夢』/
  と『バイリマ・レターズ』」(論文)、

となっている。なぜか読点で終わっているのだが、ここを昭和43年版(及び並製本の昭和44年重版)で確認するに、続いて「「中島敦――人と作品」(近刊予定)等。」とあった。岩田氏は昭和52年(1977)に没しているので削除したのだろうが、あまりに機械的なやり方というべきである。
 179〜184頁「〔参  考〕人虎伝 李景亮撰*1」は共通、末尾に(『国訳漢文大成』による)とある書き下し文。
 185〜189頁「代表作品解題」は末尾に(郡司勝義)とある。〔「光と風と夢」〕10行、〔「環 礁」〕9行、〔「斗南先生」〕8行、〔「かめれおん日記」〕9行、〔「狼疾記」〕7行、〔「悟浄出世*2」〕7行、〔「悟浄歎異」〕8行、〔「牛 人」〕8行、〔「盈 虚*3」〕10行。
 190頁「参考文献」及び191〜200頁「年譜」、後者の末尾に(郡司勝義)とある。これらについては、改めて角川文庫版と比較してみたい。
 ところで、『愛と青春の名作集』では、氷上氏の「解説」が211頁まであって、これが旺文社文庫版の169頁だが、その後、文庫版の170〜190頁、井上氏と岩田氏の文章、「人虎伝」の書き下し文、「参考文献」は再録されていない。代わりに212〜223頁、高橋俊三「「李陵・山月記」をどう読むか」という、敬体の語りかけるような調子の文章がある。1頁17行。初めの2頁弱は総論で、以下「() 音読をして読みの抵抗をなくす」「() 登場人物を比較・対照して読みを深める」「() 文章を書いて感想を定着させる」との各論になる。1行37字だが節番号は本文の上から2字分上に位置している。「年譜」は組み直されて224〜229頁、少し体裁のおかしくなったところもなるが、内容は同じ(らしい)。次の見開きに「愛と青春の名作集《全30巻》」の広告があり、本書は25番めに載っている。最後に奥付。(以下続稿)

*1:ルビ「じんこでん・りけいりよう」。

*2:ルビ「ごじよう」。

*3:ルビ「えいきよ」。