瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

四代目桂文團治の録音(4)

 関係ない話ばかりしてしまった。10年前から引っ掛かっていたことで、人間国宝の最後の大舞台だから、天下のNHKとして取材してやらなきゃ、とでも云うような、傲慢な姿勢が見えていた。しかし、だからこそ、天下のNHKとしてもっと分かった人間を配して、しっかり制作すべきだったのではないか。全く落語を知らない人みたいで、変に通ぶる人よりかマシかも知らんが、分かっていてそれを知らぬ人にも分かるように説明して見せるのが、映像の力なのではないか、と……話が逸れ過ぎたところで四代目桂文團治(1878.8.6〜1962.12.14)の録音に話を戻す、いや戻すも何も、10月4日付(1)に解説書の表紙を並べただけだったのだが。

古今東西 落語家事典

古今東西 落語家事典

 諸芸懇話会+大阪芸能懇話会 編『〈古今/東西〉落語家事典』(一九八九年四月七日初版第一刷発行・平凡社・460頁*1)には、243〜335頁「上方篇」の324〜335頁「七、戦後上方落語を支えた人々」の327〜328頁に「四代目桂文團治」として立項されている。写真は「ビクター落語 上方篇」の箱にあるものと同じ、上から下がっているマイクを前に、無地の屏風を背後に紋付き袴で演じている姿で、こちらには伸ばした右手まで写っているが、随分暗い。最後の段落を引いてみる。

 朝日放送による『らくだ』『舟弁慶』/『いかけや』『島巡り』『帯久』『肝つぶ/し』『初天神』『寝床』『鬼あざみ』など/の音が残っており、『初天神』はレコー/ドになっている。


 ここに9つ挙がっているうち『島巡り』を除く8つが3枚のCDに収録されたのである。
 3枚のCDの解説書、表紙左上の顔写真、表紙裏の演目の左、下駄に杖を突いて歩く全身写真。演目の上のタイトルに「監修・解説=前田憲司/リマスター=草薙俊一」、1〜3頁、前田憲司「よみがえった幻の落語家」、4〜5頁「四代目 桂 文團治」、そして箱の右の、先に言及した、上から下がっているマイクを前に、屏風を背景に演じている写真は、共通している。
 音源はいずれも「ABC上方落語をきく会」で、第1回(昭和30年12月1日収録)が「らくだ」、第2回(昭和31年2月1日収録)が「いかけ屋」、第3回(昭和31年5月1日収録)が「帯久」、第4回(昭和31年7月12日収録)が「船弁慶」、第5回(昭和31年9月12日収録)が「鬼あざみ」、第7回(昭和32年4月22日収録)が「肝潰し」、第8回(昭和32年12月2日収録)が「初天神」、第10回(昭和33年6月25日収録)が「寝床」である。ライブ録音で会場は休演した第9回までが高麗橋三越劇場、第10回は中之島ABCホール。収録順に並べられているのではなく、1枚め(VZCG-756)が第1回と第3回、2枚め(VZCG-756)が第4回・第10回・第5回、3枚め(VZCG-757)が第8回・第2回・第7回、うち第8回は【初CD化】、第3回と第5回を除く残りが【初商品化】とある。

 第3回の「帯久」が収録されているようだが、ビクター落語とほぼ同時期の発売で二代目桂春團治の「あんま炬燵」の方には「初CD化音源」とあるが、これにないのは、やはりビクター落語以前のCDがあるからなのだろう。しかしビクター落語以前の「帯久」と「鬼あざみ」のCDは、ネットで少し検索した限りでは上がって来なかった*2
 それから『ご存じ古今東西噺家紳士録』に「いかけや」が収録されているが、別音源なのだろうか。 なお、『〈古今/東西〉落語家事典』に見える『島巡り』は、前田氏の解説にはこの題こそ出て来ないが、解説書2頁18行めに「客のいないスタジオで収録された艶笑話が残っている」というのに当たるように思われるのだが、これは出さないつもりなのだろうか。『ご存じ古今東西噺家紳士録』の前に出た『古今東西噺家紳士録』に収録されている、音源「大阪・スタジオにて」とする『艶笑小咄〈08:39〉』が同じものだろう。それとも別物なのか。とにかく、これも聞いていない。
 ところで、第9回を病気休演したことは前田氏の解説にあるが、説明のない第6回放送分がこの「艶笑小咄」もしくは「島巡り」なのではないか、と思ったりもするのだが、ただの想像である。(以下続稿)

*1:Amazon詳細ページの書影は函のもので、私は見たことはない。

*2:2014年3月23日追記

CDブック 栄光の上方落語

CDブック 栄光の上方落語

栄光の上方落語 /CDブック

栄光の上方落語 /CDブック

「帯久」と「鬼あざみ」は朝日放送ラジオ主催「上方落語をきく会」の50周年を記念してのCD10枚組のCDブック『栄光の上方落語』のCD1「明治の香り」に初代橘ノ圓都の昭和30年(1955)録音「高尾」と昭和40年(1965)録音「丙午」と抱き合わせて収録されている。