4月23日付(3)の続き。
この、列車により下半身を轢断された上半身が這って追って来る、という話は、小池壮彦『日本の幽霊事件(幽BOOKS)』(2010年7月16日初版第一刷発行・定価1300円・メディアファクトリー・238頁・四六判並製本)でも取り上げられています。
- 作者: 小池壮彦
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2010/07/16
- メディア: 単行本
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【初出】
『幽』一号(二〇〇四年六月)から十三号(二〇一〇年七月)に掲載されたものに加筆・訂正しました。
「補章①」「補章②」は書き下ろしです。
13の章が連載通りの順序で並んでいるのですが、10番め(142〜156頁)が「追って来る屍体………………中川鉄橋」で平成20年(2008)夏の「幽」Vol.10に掲載されたものです。
書き出しは次のようになっています。142頁3〜12行め、
稲川淳二が語る怪談に「生首」という話がある。
福岡に住む八十二歳の男性が、若い頃に体験した逸話として語られる。
戦後まもない頃、男性は川で夜釣りをしていた。魚籠の代わりに使っていたザルの中を/見ると、血まみれの生首が睨んでいた。近くの鉄橋で自殺を図った女がおり、切断された/首が偶然にもザルの中に飛び込んだ。橋の上では首をなくした胴体が痙攣し、手足をばた/つかせて「カーン、コーン、カーン、コーン」と鉄塔を叩いていた。*1
戦慄の瞬間を切り取って鬼気迫る話である。
稲川怪談の中には「追ってくる上半身」という話もある。これは「生首」とは全然別の/エピソードだが、後に述べる理由から、私の脳裏では同じカテゴリーの話として繋がって/くる。*2
轢断された首が思いがけないところに入り込んでいた、というのは4月1日付(1)に紹介した、私が中学のときに聞いた話に同じです。「追ってくる上半身」の方は鉄道とは無関係で、這いながら追ってくる上半身だけの女に、忍び込んだ山中の廃屋で遭遇する、という話です。確かに生存不可能な状態の身体が動く、という点では共通しています。
大きな相違は、身体が切断された理由の説明があるか、ないか、です。「追ってくる上半身」と同類の話は、私も中学の頃に聞きました。夜、ある学校の校舎で忘れ物を取りに忍び込んだ生徒が追われるのですが、何故、そいつが上半身だけなのかの説明は、確かにありませんでした*3。(以下続稿)