瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

三島衛里子『高校球児ザワさん』(1)

・BIG SPIRITS COMIC SPECIAL小学館・B6判並製本
高校球児 ザワさん1』2009年5月5日初版第1刷発行・定価524円・158頁

高校球児 ザワさん 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

高校球児 ザワさん 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

 今、高校野球をやっているから取り上げた、という訳でもないのだけれども、たまたま借りられたのでメモして置く。
 001頁(頁付なし)扉、002頁(頁付なし)「目次」。
 なお、話と話の間に挟まれる頁には頁付なく、奇数頁には左下に本編の一部を流用したカット、偶数頁には何も印刷されていない。
第1話 岡山(003〜010頁)
 夏の甲子園。岡山代表の「岡山文科大学附属/高等学校野球部」のスタンド要員の1年生部員たちが、和風の「旅館/さか本」でTV番組『熱闘甲子園』をチェックする。そこで、スタンドでも目にした、010頁2齣めのテロップ「今大会出場校中唯一の女子部員都沢理紗さん(日践学院)」を見る*1。主人公の「ザワさん」である。
 それはともかく、スタンド要員の1年生がベンチ要員たちと一緒に旅館に泊まってるのか、というのが疑問。
 011頁(頁付なし)のカットは009頁2齣めの下書き。
第2話 バッティングセンター(012〜020頁)
 上野顕太郎『ギャグにもほどがある』277〜288頁、第28話「○休体育祭(前編)*2」の最初の2頁、277頁上部に「高校休児ザワ休」とあって、これは本書のカバー表紙・表紙折返し*3、扉・奥付にある標題のもじりである。
 本書を読んだのはどうしてかというと、上野氏が、いろいろな漫画を一休さんの頓知咄のパロディにしてしまう「○休さん」に取り上げていたからで、「体育祭」というのは特にスポーツ漫画だけを集めたからなのである。――上野氏が取り上げた、ということは上野氏が認めた、ということになろうから、面白くないはずがない、と踏んだのである。いろいろな漫画の名場面が、一休頓知咄の「この橋渡るべからず」か「屏風の虎」その他に当て嵌められている。そして、子供向け絵本で無邪気に読み飛ばしていた(それからアニメも見たけれども)一休さんの頓知の数々が、実は大変な緊迫感を伴った真剣勝負の場面であったことに気付かされるのである。恐るべし、上野顕太郎。やっぱり天才だ。
 この「○休」についての総論(?)風の文章は別に用意しているのだが、まだ整わないので後回しにする。差当り『ギャグにもほどがある』(2013年11月6日初版初刷発行・定価780円・エンターブレイン・303頁)の書影を貼って置こう。 で、上野氏はこの第2話を一休さん、というか「ザワ休」にしているのである。
 以下、どうもじってあるのか逐一確認して置く。どちらがどちらなのかは頁の違いで確かめられたい。
 013頁2齣め「昭島バッティングセンター」の看板が、277頁1齣め「昭島トンチングセンター」になっている。夜空に描かれる「キンッ」という音は省かれている。
 012頁(1齣)に、バッティングセンターに入ってきて、荷物を置いたりする男子部員3人と主人公が描かれる。
 013頁3齣めから、主として主人公の様子が描写され、そこにバッティングセンターの従業員2人の会話が吹出しで被さる。野球部員がわざわざバッティングセンターにまで来るのが意味不明だと言い、マネージャーらしき主人公が「ちょっとカワイイ」のにムカツクのである。しかし、その「“無償の愛”みたいな」のを捧げてるだけの存在だと思っていた主人公が、自分の番が来て、017頁1齣め、ドアの上に「○140km/h」*4とある部屋に入るのを見る。

従業員A:「おいおい そこ140km/hだぞ。」
従業員B:「大丈夫なんスかね。」


 こうして、2人は自分たちの勘違いに、次第に気付かされて行くことになるのだけれども。
 277頁2齣め、小僧の格好をした主人公が、もちろんスキンヘッドでこれが○休さんのお約束なのだけれども、ドアの上に「屏 風」とある部屋に入る。2人の台詞はなく、「キンッ」という金属音もやはり省かれている。強化ガラスの窓には「ジュニア/トンチング/スクール」のポスターが2つ貼ってある。017頁1齣めではポスター(1枚だけ)の文字は読めないが、012頁にて「ジュニア/バッティング/スクール」と判読される。
 017頁2齣め、ネットを背景に、主人公が右腋にバットを挟み、左手に黒い手袋を嵌めるところ、右の手袋は口に銜えている。視線はマシーンの方を見ている模様。これが、277頁3齣めではネットを背にした主人公が黒い襷を口に銜えていることになっている。齣が狭く左腕をより高く挙げているので、両手は描写されていない。また「キンッ…」という金属音は省かれている。
 018頁と019頁は上中下の3齣で主人公がバットを構える様子がほぼ無音*5で描写される。服装はセーラー服のままで、019頁3齣めに描かれる右足は女子生徒の制靴(黒の革靴)である。これが278頁1齣め、やはり右足が描かれるが白足袋に草履である。
 020頁1齣め、バッティングセンターの従業員2人が「…………………」「………………」と無言で見つめる中、020頁2齣め、ネットを背に堂々たる構えの主人公の全体像が描かれ、そこに、

従業員A:「ホームランだな。」
従業員B:「ホームランっスね。」

という吹出しが添えられる。まさに襟を正すって感じですか。これが278頁2齣め、襷掛けをした小坊主スタイルの主人公が、屏風の虎を前に縄を持って身構える全身像になっていて、背後にネット、台詞はない。すなわち台詞は全くなく、静寂の中でザワ休が屏風の虎に気持ちを高めて(?)対する様が描かれているのだ。
 278頁下部に「○休体育祭(前編)*6」と今回のタイトル、すなわちここまでの「ザワ休」は「体育祭」のイントロだったのである。
 021頁(頁付なし)のカットは016頁3齣めの一部。(以下続稿)

*1:009頁3齣めにナレーションで「日践学院アルプススタンドでは唯一の女子部員、都沢理紗さんも熱いエールを送ります。」と紹介されている。

*2:目次のルビ「まるきゆう」

*3:背表紙にも縦組みで入る。

*4:○に「左」。

*5:018頁1齣め、バットでホームベースを軽く叩く「コン…」のみ。

*6:ルビ「まるきゅう」。