瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

三島衛里子『高校球児ザワさん』(4)

 本作を取り上げたのは2014年8月15日付(1)に述べたように、上野顕太郎『ギャグにもほどがある』に、第2話「バッティングセンター」(『1』012〜020頁)のパロディが載っていたから興味を持ったのだが、続きがあったら読んでも良いかくらいに思っていたところ、今月中旬に次の1冊を図書館の書棚に見付けた。
・BIG SPIRITS COMIC SPECIAL小学館・B6判並製本

高校球児 ザワさん 4 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

高校球児 ザワさん 4 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

高校球児 ザワさん4』 2010年5月3日初版第1刷発行・定価524円・158頁
 『3』くらいまで読んだのような気がして借りたのだが、実はまだ『1』しか読んでいなかった。しかし、若干のギャップはあるものの読むのにそんなに困らなかった。
 どんな点にギャップを感じたかだが、設定が詰められていることで、カバー裏表紙中央の明朝体縦組みの紹介文にて見て置こう。

名門・光聖女学院中等科/出身、中学時代は三鷹南/シニア所属。家はボロい。/自分のことを「理紗」と/呼ぶ。172㎝、59㎏、3/月8日生まれ。『月刊高/校野球』に載った。応援/歌は『タッチ』希望。アク/セントは「ワ」じゃな/く「ザ」。エースの兄が/…いる。野球部の紅一点・/都澤理紗のなーんてこと/ない日常素描。


 傍点「ヽ」が打たれた文字は再現出来ないので仮に太字にして置いた。二重鍵括弧も半角。――『1』の紹介文は2014年8月17日付(3)に引いたが、随分ぼんやりしたものだった。
 さて『4』についても『1』と同じように細目を挙げて行っても良いのだけれども、『2』『3』を飛ばして先に進んでも中途半端な記事を積み重ねるだけに終わる可能性大なので、今回は気になった話だけ取り上げて置くこととしよう。
 032〜040頁「第52話 青梅特快 東京行き」、高1の8月31日か、9月初めのまだ授業がはじまる前の、1日中部活動で過ごした日の帰りの電車を扱っている。
 032頁(1齣)は内容に無関係のユニフォーム姿の主人公のイラスト。033〜040頁が青梅特快東京行の車内で、主人公と同学年の男子部員楠本玄・守口健太郎の3人で、連結部の貫通扉脇の3人掛けを占拠している。(貫通扉)守口・楠本・都澤(乗降扉)の順である。
 033頁(3齣)1齣めはリーン リーン/リーンと虫の鳴くホームの隅、2齣めに車内の照明に照らされるホーム。ちょっと鄙びた雰囲気で中央線ではなく青梅線の駅らしい。青梅特快は青梅線内は各駅停車だから、出発したところだろうか。3齣め、主人公の放心したような横顔。この駅から乗ったのではないらしい。
 以下、039頁まで同じ齣割り(3齣)。
 034頁から会話。愚痴など、取り留めのない内容である。だから内容には触れない。
 035頁2齣めに手書きで「次は中神、中神にとまります」と車内放送が書き込まれている。――そうすると、033頁に描かれていた駅は昭島駅で、主人公たちが乗ったは拝島駅かその先の駅と云うことになろう。
 038頁2齣め、車窓から見た立川駅のホームで、天井から吊ってある駅名表示の看板には、左側の国立に矢印が向かっている。すなわち、ホームは右側と云うことになる。描写されていないが、ここまでに東中神駅と西立川駅にも停車したはずである。
 039頁1齣め、車内の照明に照らされて沿線の「マンション/古…」との看板が見えている。――国立・西国分寺を通過し、国分寺駅では大抵快速が待ち合わせている。武蔵小金井・東小金井・武蔵境は通過。
 040頁(頁付なし)は1齣めが小さく、開いている乗降扉の向こうに、天井から吊ってある三鷹の駅名表示の看板、右側の吉祥寺に矢印が向かっている。右に手書きで「ドアが閉まります ご注意下さい」との車内放送が書き込まれ、左の吹き出しに「――――あ!」。乗降扉の上の液晶画面には「青梅/特快」「東京行」「ただいま三鷹です」「3号車」「19:16」の文字が読める。そして頁の下部7割ほどを占める2齣め、主人公たち3人が振り向いて、背後の窓からホームの柱に掛かる「みたか」の駅名表示を見送り、

都澤:「三鷹……………/これ特快だっけ?」
楠本:「うん。/俺らすごい乗り過ごしてる系?」
守口:「…うん。

との会話、「うん」は小声らしく小さい。
 これが落ちだが、ここで疑問があるのは、040頁1齣め、これは主人公たちが取り留めもない会話を続けるうちにふと乗降扉の外を見たら降りるはずの「三鷹」だった、そしてドアが閉まると高い位置の駅名表示は見えないから、2齣めでは振り向いて、背後のホームの駅名表示を確認しようとしているのであろうが、――これは変である。
 何故なら、三鷹駅のホームは南から島式ホームが3つ、1番線2番線は中央・総武緩行線(一部東京メトロ東西線直通電車)、3番線4番線は中央線快速下り、5番線6番線は中央線快速上りと並ぶ。そして中央線快速は南側・奇数の番線が特急・急行・特快の待ち合わせや通過列車の待避のために使われ、そうでなければ北側・偶数の番線を発着する。すなわち、特快(特別快速)は必ず北側・偶数の番線に入るはずなのである。上りであれば6番線である。
 そうすると、1齣めは5番線6番線ホームの、6番線向きの表示を見ることになるはずなのだが、その場合、北に位置する車内から南のホームを見ているのだから、東の吉祥寺の位置は左側のはずである。そして2齣め、主人公たちが振り向いても、すなわち今度は北を向くことになる訳だが、6番線の背後は武蔵野芸能劇場か何かが見えるだけで別のホームは見えない。
 或いは、主人公たちは3号車の右側先頭寄りの3人掛けに掛けているとする。そうすると発車してから振り向けば5番線6番線の東京寄りの柱の「みたか」の表示が見える。しかしそうすると、1齣めの天井から吊った駅名表示板も振り向かないと見えない。空いている乗降扉越しに見ているのは誰の視線なのか、と云うことになってしまう。
 しかしそうだとしても、6番線に停まるはずの青梅特快(及び中央特快)の車内から、三鷹の右に吉祥寺が位置する駅名表示板を見ることはないはずなので、――特快などを待ち合わせるために5番線に停車する「快速」電車であれば、南側に停まって北側にあるホームの駅名表示板を見る恰好にはなるから、東に位置する吉祥寺が駅名表示板の右側に示されることになるはずなのだけれども。
 以上、昨日までの中央線の話題の続き(?)と云うことで、分かりにくいと思った人は Google Earth 等で確認して見て下さい。(以下続稿)