瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

楳図かずお『ミイラ先生』(08)

 6月14日付(07)の続き。比較の要領は5月9日付(03)に示しました。
・文庫版161頁(複写)扉絵→完全復刻版『続ミイラ先生』カバー表紙(カラー)
 連載第6回の扉絵である。完全復刻版『続ミイラ先生』カバー表紙は左と下を少し書き足し、標題と作者名を差し替え、彩色して利用している。『続ミイラ先生』の内容とは関係がない。
・文庫版162〜172頁=完全復刻版63頁7〜10コマめ=単行本82〜92頁
 文庫版と単行本は完全に一致する。完全復刻版は普通の台詞は吹出しの中にやや横長の和文タイプ風明朝体で入っているが、単行本では仮名が明朝体で漢字がゴシック体に改められている。また、大きな声をやはり吹出しの中にやや横長の和文タイプ風ゴシック体で示すが、これも単行本では仮名が明朝体で漢字がゴシック体に改められている。すなわち、完全復刻版の吹出し中の文字は手書きの叫び声を除いて殆ど単行本化に際して改められているのだが、例外であるのは完全復刻版では大きなゴシック体で示されている叫び声である。すなわち、完全復刻版78頁1コマめと3コマめの絵美子の叫びを見るに、文庫版164頁・単行本84頁とも一致するようだ。頁を遡って確かめるに、大きなゴシック体のみ他の箇所も同様に、完全復刻版と単行本は一致している。以下も同様である。文庫版は単行本と一致しているが初出誌もそのままだったのかどうかは分からない。
 完全復刻版79頁2コマめ、墓地の外れ・崖の上の草むらに倒れている絵美子を葉山先生に惚れている数学の田中先生が介抱する場面で、田中先生が「君は絵美子くんじゃないかっ」と言うのに対して絵美子の口から出たよれよれの吹出しには何の文字もない。文庫版165頁(=単行本85頁)2コマめを見るに、田中先生「絵美子くんじゃないか!」絵美子「はあはあ」となっている。
 完全復刻版85頁2コマめの、絵美子の友人アコの台詞は吹出し2つに分かれているが、文庫版171頁(=単行本91頁)2コマめは結合している。内容的にも連続させるべきだし、吹出しの大きさに比して台詞の量が多く、しかも重なり合っているので境界の線を取り払ってしまうのは妥当な措置と云えそうだ。尤もアコの口から2つ吹出しているのも、どちらか1つ、視覚的には右側のみにするべきだと思うけれども。異同は最初が完全復刻版「うふふ‥‥」が文庫版・単行本「うふふふ‥‥」となっているのみ。
・文庫版173頁(複写)1〜4コマめ=完全復刻版87頁1〜4コマめ→単行本93頁1〜4コマめ
 単行本はいづれのコマも左右を書き足して、1コマめと2コマめを横幅一杯に、3・4コマめを左右に並べている。文庫版・完全復刻版は次の5コマめが3・4コマめの左にあった。
 絵は文庫版(複写)と完全復刻版が同じ。完全復刻版と単行本は台詞は表記以外は同じ。
 1コマめの葉山先生(実はミイラ)の台詞、文庫版「神さま…… あなたのまえでうそいつわりのない人間であることを ちかいます」完全復刻版「イエスさま あなたの前でうそいつわりのない人間である事をちかいます」単行本「イエスさま あなたのまえでうそいつわりのない人間であることをちかいます」
 2コマめの葉山先生(実はミイラ)の台詞、文庫版「さて 絵美子さん このころ 成績がさがりましたね/なにか気になってることがあるようですね……みんないってちょうだいね」完全復刻版・単行本「絵美子さん このごろ成績がさがりましたね/何か心にわだかまることがあるようですね みんないってちょうだい」
 3コマめの葉山先生(実はミイラ)の台詞、文庫版「そうね……まずきのうはどうしていましたか?」完全復刻版・単行本「きのうはどうしていましたか いってごらんなさい」。
 4コマめの絵美子の台詞、文庫版「きのうは夕がた墓地にいって……」完全復刻版・単行本「わたし墓地へいきました」。
・文庫版173頁(複写)5コマめ=完全復刻版87頁5コマめ=単行本93頁5コマめ
 絵美子の台詞、文庫版「そして……あっ ミイラにおそわれたんです! 学校のミイラにです!」完全復刻版「そしてミイラにおそわれたんです 本当です あれは学校のミイラです」単行本「ミイラにおそわれたんです 本当です! あれは学校のミイラです」。
・文庫版173頁(複写)6コマめ=完全復刻版87頁6コマめ→単行本93頁6コマめ
 このコマも単行本は左右が書き足されている。葉山先生(実はミイラ)の台詞、文庫版「まあっ そんな…… また ミイラの話……」完全復刻版「まあ そんなばかな じょうだんでしょう」単行本「まあ! そんなばかな! じょうだんでしょう」。
・文庫版173頁(複写)7〜9コマめ=完全復刻版87頁7〜9コマめ→単行本94頁1〜3コマめ
 文庫版・完全復刻版は3段めの左と4段目の右左に位置していたが、単行本は左右を書き足してそれぞれ横幅一杯・1〜3段めに配置されている。
 文庫版7コマめの葉山先生(実はミイラ)の台詞「で そこであなたはなにかひろいませんでしたか?」完全復刻版7コマめ「そこであなたは何かひろいませんでしたか」単行本1コマめ「そこであなたは何かひろいませんでしたか?」。
 文庫版8コマめ、絵美子と葉山先生(実はミイラ)の台詞「そうだわ! 十字架をひろいました」「そ それはどこにあるの? さあ 見せてっ」完全復刻版8コマめ・単行本2コマめ「そうそう 十字架をひろいました」「それはどこにあるのですか みせてちょうだい」。
 文庫版9コマめの絵美子の台詞「あのう いまもってません 家にいけばあると思うんですけど……」完全復刻版9コマめ「今 もっていません けさみるとないのです さがして………」単行本3コマめ「いまはもっていません けさみるとないのです……… ………」。完全復刻版の「さがして………」は据わりが悪い。どうも、単行本も当初同じようにしていたらしいのだが、途中でそれを「………」に置き換えたようである。台詞の最後が2行「………」になっており、1つめの「………」は左右の行よりもやや高いところから始まって、2つめの「………」が字間に若干の隙間があるのと違って隙がない。
・文庫版174頁(複写)1〜2コマめ=完全復刻版88頁1〜2コマめ→単行本94頁4〜5コマめ
 単行本は左右を書き足して、4段めの右左に配置。
 文庫版1コマめ、葉山先生(実はミイラ)と絵美子の会話「じゃあやっぱりおうちにあるのね」「え ええ……」完全復刻版1コマめ「でもどこかにいれわすれたのよ どこです」「よくさがしてみます」単行本4コマめ「でもどこかにいれわすれたのよ どこです?」「よくさがしてみます」。
 文庫版2コマめ、絵美子の台詞「でも 先生 どうしてそんなにあの十字架が見たいんですか?」完全復刻版2コマめ「でも先生 どうしてそんなにあの十字架がみたいのですか」単行本5コマめ「でも先生 どうしてそんなにあの十字架がみたいの」。
・文庫版174頁(複写)3〜6コマめ=完全復刻版88頁3〜6コマめ→単行本95頁1〜4コマめ
 文庫版と完全復刻版は3コマで1段、6コマめまでで2段。単行本は左右を書き足し、この4コマで2段。
 文庫版3コマめ、葉山先生(実はミイラ)の台詞「い いや べつに/……なんでもないわ」完全復刻版3コマめ「えっ ええ…べつに/なんでもないわ」単行本「え ええ…べつに/なんでもないわ」。
 文庫版4コマめ、葉山先生(実はミイラ)の台詞「それよりこんど 家庭訪問することになったの ご両親にはいつでもおあいできるの……?」完全復刻版4コマめ「それより一度 家庭訪問します お父さんたちのいる日といない日をおしえてちょうだい」単行本2コマめ「それより一度 家庭訪問します おとうさんたちのいる日といない日をおしえてちょうだい」。
 文庫版5コマめ、絵美子の台詞「こんどの日曜日はしんせきにでかけておりません」完全復刻版5コマめ「次の日曜日は二人ともしんせきへ行っていません」単行本「つぎの日曜日はふたりともしんせきにいっていません」。
 文庫版6コマめ、葉山先生(実はミイラ)の台詞「そう……」完全復刻版6コマめ・単行本4コマめ「そう」。
・文庫版174頁(複写)7〜10コマめ=完全復刻版88頁7〜10コマめ=単行本95頁5〜8コマめ
 頁下部の2段で1段に2コマずつ。
 文庫版7コマめ、葉山先生(実はミイラ)と絵美子の会話「ありがとう かえっていいわ」「はい……」完全復刻版7コマめ「今日はこれで帰っていいわ」「はい」単行本5コマめ「きょうはこれでかえっていいわ」「はい」。
 文庫版8コマめの地の文「そして日曜日。」完全復刻版8コマめ・単行本6コマめは句点なし。なお、日めくりカレンダーに「2月/19||日曜日」とあるのは昭和42年(1967)2月である。
 文庫版10コマめ、絵美子の台詞「だんだん日が くれてきたわ/パパやママ はやくかえってこないかなあ」完全復刻版10コマめ「だんだん日ぐれてきたわ/パパ…ママ…はやくかえってきて 」単行本8コマめ「だんだん日ぐれてきたわ/パパ…ママ…はやくかえってきて!」。
・文庫版175頁(複写)1〜5コマめ=完全復刻版89頁1〜5コマめ=単行本96頁1〜5コマめ
 1〜3コマめが1段め、4〜5コマめが2段め。
 2コマめの絵美子の台詞、文庫版「あんなにほえてどうしたのかしら」完全復刻版・単行本「あんなにないてどうしたのかしら」。
 4コマめの絵美子の台詞、文庫版「どなたですか……」完全復刻版「ど、どなたですか」単行本「ど どなたですか」。
・文庫版175頁(複写)6コマめ
 完全復刻版にはこれに対応するコマがない。単行本には対応するコマはあるが、一致しない。(以下続稿)