瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

園田てる子(1)

 横書きで読む、画面で読む、ということに馴染まないので、青空文庫で作品を読んだことは、殆どない。
 もちろん、理由はそればかりではない。30年来の図書館主義者で、作品は本文だけでなく収録している本の装幀やら、編集振りやら解説などにも注目する癖があるので、そういうものを削ぎ落とした本文だけを読むのが不安なのである。
 だから青空文庫は引用の際の入力の手間を省く(もちろんそのままでは使えないが)ためと、語句を検索するくらいでしか使っていない。
 先日、ふと思い立って青空文庫を覗いて見たのは、昨年末で著作権が切れた作家が気になったからであった。それからTPPで著作権が70年に延長されるかも知れぬという問題も、気になっている。
 著作権を延ばして誰が得するのか。というか、これ以上得してどうするんだ。死後も読まれ続けるような作家なら良いが、若い頃少々佳品を書いて筆を折った無名作家がその後50年以上生きたとしたら、作品が書かれてから100年経って漸く自由に青空の下に曝される勘定だ。忘却されるための時間が長くなるだけで、殆ど何の得もない。
 それはともかく、何となく覗いて見てトップページの「資料室」の「著作権が消滅した作家」をクリックしてみた。「青空文庫への登録が可能な作家のリストです。」との説明がある。
 冒頭は次のようになっている。

参考資料1
著作権の消滅した作家名一覧
 
1997年12月4日 作成
2006年3月1日 修正
2009年12月1日 三浦吉兵衛の没年月日のみ部分修正
2010年7月6日 山城正忠の没年月日のみ部分修正
2013年6月10日 田口掬汀と山路愛山の生没年月日のみ部分修正
 
このリストになければ、その作家の著作権はまだ、切れていないのかもしれません。
死後50年を経ていない作家の没年は、「死せる作家の会」で確認できます。

とあるのだが、「死せる作家の会」は「平成十六年(2008)」の2月までで以後のデータが追加されていない。もちろん掲載されているデータの修正も滞っている。削除した方が良いのではないか。
 それはともかく、何となく眺めていて「おや」と思ったのは、次の項目である。

【そ】
相馬愛蔵 そうま・あいぞう(1870年10月25日〜1954年2月14日)
相馬御風 そうま・ぎょふう (1883年7月10日〜1950年5月8日)
相馬泰三 そうま・たいぞう(1885年12月29日〜1952年5月15日)
添田唖蝉坊 そえだ・あぜんぼう(1872年11月25日〜1944年2月8日)
園田てる子(1926年11月12日?〜1926年5月11日)


 まず生年月日に疑問符「?」が附されているのが気になった。しかし没年月日を見ると、それ以上に不可解なことになっているのである。
 そこで「園田てる子」で検索してみると、青空文庫「作家別作品リスト:No.619」に、

作家名: 園田 てる子
作家名読み: そのだ てるこ
ローマ字表記: Sonoda, Teruko
生年: 1926-11-12
没年: 1926-05-11

とあって、以下の「公開中の作品」と「作業中の作品」及び「関連サイト」の欄は空白になっている。
 恐らく「著作権の消滅した作家名一覧」の方は、この「生年」と「没年」の矛盾に気付いて、取り敢えず生年月日の方に疑問符「?」を付して置いたのだろう。
 しかしこれは、没年の方がおかしいのである。著作権は消滅していない。
 すなわち、国会図書館OPACで検索すると昭和31年(1956)から昭和51年(1976)までの47冊がヒットする。「青空文庫」に園田氏のデータが登録された時点で検索しても(若干の出入りはあるかも知れないが)同様の結果が得られたであろうから、「著作権の消滅した作家名一覧」の生年に「?」を付す際に、もう一歩進んで著書の刊年の確認をしてもらいたかった。
 では、生没年はいつかというと、「日本推理作家協会」HP「会員名簿」にある「園田てる子」項には、「1927〜1976」とある。没年が間違っているのはもちろん、生年月日も間違っていることになる。(以下続稿)