瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

松葉杖・セーラー服・お面・鬘(2)

ギンティ小林新耳袋殴り込み』
 昨日の続き。
 この人物に関する文献には、後述するように出没していた時期のものもあるのですが、まずはこの人物について、話題が再燃するきっかけになったギンティ小林による言及を見て置きましょう。
ギンティ小林『突撃!現代百物語 新耳袋殴り込み』洋泉社・271頁四六判並製本

新耳袋殴り込み

新耳袋殴り込み

・2007年8月9日 第1刷発行・定価1300円
・2007年8月9日 第1刷発行・2007年9月10日 第2刷発行・定価1300円
 標題は奥付に拠ります。カバーは一致、異同は奥付の発行日の追加。
角川ホラー文庫18018『新耳袋殴り込み 第一夜角川書店・平成25年6月20日 初版発行・定価590円・275頁
 276頁の裏、奥付の前の頁、下部中央に縦組みで、

本書は二〇〇七年八月に洋泉社より刊行された『突撃! 現代百物語/新耳袋殴り込み』を加筆・修正し、文庫化したものです。

とあります。
 加筆箇所ですが、文庫版249〜262頁「ボーナストラック」の第九十七話〜第九十九話は、単行本刊行後の後日談です。単行本には「ボーナストラック」抜きで第九十九話まであったので、単行本から引き継いだ部分も構成などに手が入っていることになります。ただ今回は『新耳袋殴り込み』そのものの検討がしたい訳ではないので全体的な構成の比較は省略します。文庫版265〜275頁、木原浩勝「解説殴り込み」も文庫版に於ける追加です。
 さて、問題の記述は単行本1〜3頁(頁付なし)文庫版3〜6頁「まえがき」にあります。文庫版3頁1行めには「まえがき」とありますが単行本にはなく、いきなり本文が始まっています。しかしながら4〜9頁(頁付なし)「目次」4頁2行めに「まえがき」とあるので、単行本もこの文章を「まえがき」として置きます。
・単行本1頁1行め「怪異・怪談にまつわる本を書く」→文庫版3頁2〜3行め「怪談にまつわる/本を出すことになる」。
・次に肝腎の部分があります。本文は単行本1頁3〜8行めを引用して、文庫版3頁4〜11行めの異同を注記して置きます。異同箇所は灰色の太字にして文庫版の形を注に示しました。改行箇所は単行本「/」文庫版「|」で示しました。

 そもそも僕は人一倍のビビりだ。中学3年生*1の頃、地元にセーラー服を着た片足の女|が出没するという噂/が広まった。その女性は全身がケロイドで、*2それを隠すためにかつら|を被*3り、化粧をしたお面を被っている/という。そのお面が『魔法使いサリー』に似てい|ることから、サリーちゃんと呼ばれるようになった。ある/日の放課後、僕は友達数人と|地元の駅前にたむろしていた。するとカツン、カツンという*4音が聞こえた。|サ/リーちゃんだった。こっちに向かってサリーちゃんが歩いてきた。お面や服の隙間か|ら見える肌は象のよう/だ。僕は友達を置いて真っ先に逃げた。この失態で教室内での地|位は暴落した……。


 これが言わば原型です。この本では「三本足の」とは云っておりません。――ついでに文庫版に加筆振りを窺うべく「まえがき」の残りの部分の異同も挙げて置きましょう。
・単行本1頁11行め「怪異スポット」→文庫版3頁15行め「心霊スポット」。
・単行本1頁12行め「怪異スポット」→文庫版3頁16行め「心霊スポット」。
 但し文庫版3頁12行め「心霊スポット」は単行本1頁9行めも「心霊スポット」。
・単行本1頁12〜13行め「怪異スポットに向/かう車の中で」→文庫版3頁16行め「車の中で、」。
・単行本1頁13行め「とり憑かれ」→文庫版4頁1行め、ルビ「つ」。
・単行本1頁14行め「怪異スポット」→文庫版4頁2行め「心霊スポット」。
・単行本1頁15行め「廃墟」→文庫版4頁3行め、ルビ「はいきよ」。
・単行本1頁15行め「Hの姿を」→文庫版4頁3行め「彼の姿を」。
・単行本1頁16行め「呆れ」→文庫版4頁4行め、ルビ「あき」。
・単行本1頁18行め「喋った」→文庫版4頁7行め、ルビ「しやべ」。
・単行本1頁18行め「怪訝」→文庫版4頁7行め「怪訝/」ルビ「けげん」。
・単行本1頁18〜19行め「を浮かべるのだ。/ 「さっきからどうしたの?」/」→文庫版4頁8行め「/を浮かべるのだ。どうしたの? と聞くと、/」。
・単行本2頁1行め「相槌」→文庫版4頁9行め、ルビ「あいづち」。
・単行本2頁3行め「不憫」→文庫版4頁11行め、ルビ「ふびん」。
・単行本2頁5行め「「……!」」→文庫版なし(4頁13行め・14行めの間)。
・単行本2頁6行め「置物のように乗っている。」→文庫版4頁14〜15行め「置物のよ/うにテレビの上に乗っている。」。
・単行本2頁7行め「僕はすぐに眼をそらした。」→文庫版4頁16行め「思わず眼をそらした。」。
・単行本2頁12行め「連載で、怪異スポットを」→文庫版5頁3行め「連載で心霊スポットを」。
・単行本2頁13行め「見に行く」→文庫版5頁4行め「観に行く」。
・単行本2頁14行め「 怪異スポットのほとんどは『現代百物語 新耳袋』(メディアファクトリー/角川文庫刊)に綴られた」→文庫版5頁6行め「 心霊スポットのほとんどは『新耳袋』(角川文庫刊)に綴られた」ルビ「つづ」。
・単行本2頁15行め「木原浩勝さんと中山市朗さんが」→文庫版5頁7行め、ルビ「きはらひろかつ・なかやまいちろう」。
・単行本2頁15行め「場所である。」→文庫版5頁8行め「場所だからである」。
・単行本2頁15行め「僕のような輩」→文庫版5頁8行め、ルビ「やから」。
・単行本2頁15行め「そこでは不可解な現象が/」→文庫版5頁9行め「そこでは本当に不可解な現象が」
・単行本3頁4行め「繋がらなくなる。」→文庫版5頁16行め、ルビ「つな」。
・単行本3頁7行め「1日も」→文庫版6頁3行め「一日も」。
 書き換えというほどではありませんが細かく手を入れていることが分かります。
 さて、文庫版の「まえがき」は6頁7〜8行め、

 そんな甲斐*5あって、なんとか本書は完成しました。
 お楽しみいただけましたら何よりです。

で終わっているのですが、単行本3頁10〜11行め、

 そんな甲斐あって、なんとか本書は完成しました。この場を借りての本に協力してくださった皆様に、心/より感謝を申し上げます。

となっていて、さらにもう1段落(12〜19行め)、

 僕の無謀な企画意図に理解を示していただき、多くの取材にも協力してくださり、取材結果に耳を傾けて/くださった『新耳袋』の著者である‥‥

として、以下、姓名が示されている者だけでも15人に対する、19行め「‥‥さん。ありがとうございます!」という謝辞が述べてあるのですが、文庫版では263頁に「謝辞」として、10人(イニシャルの人も含めて)と2つの団体の「皆さん」への謝辞に変わっており、個々の事情も省略されています。(以下続稿)

*1:文庫版「三年生」

*2:文庫版「ケロイド。」

*3:文庫版ルビ「かぶ」。

*4:文庫版「金属の杖の」挿入、ルビ「つえ」。

*5:ルビ「かい」。