瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

松葉杖・セーラー服・お面・鬘(4)

・「映画秘宝
 ギンティ小林新耳袋大逆転』及びその文庫版『新耳袋殴り込み 第二夜』の記述を順に検討しても良いのですが、小林氏がこの人物を著述に取り上げるに至った経緯から見て置きましょう。
 単行本「第二十九話」文庫版「第二十五話」の「蘇る都市伝説」に、その切っ掛けが語られています。91頁8〜12行め、文庫版79頁3〜8行め。改行箇所は前者「/」後者「|」で示した。

 二〇〇四年のこと。
 僕は洋泉社の『映画秘宝』で記事を書くようになっていた。そのときの編集長が田野|辺である。
 ある晩、僕と田野辺は編集部で徹夜作業をしていた。そこで交わした会話で一九八七|年頃、田野辺/は僕の地元付近の大学に通っていたことがわかった。二人で地元の話題に|盛り上がっていたら、長年/忘れていたことが蘇った。*1


 編集長の田野辺尚人Wikipedia「和光大学の人物一覧」に拠ると和光大学出身で、和光大学の最寄駅は小田急小田原線鶴川駅です。田野辺氏の生年はネット検索では分かりませんでした。ただ、昭和62年(1987)頃に大学生だったと云うのですから、生年は昭和42年(1967)辺りでしょうか。
 単行本91頁13行め〜92頁3行め、文庫版79頁9〜15行め。

「それなら田野辺さん、セーラー服着て仮面を被った片脚の女って知りません?」
 何気なく聞いた。すると、田野辺の目の色が変わった。
「知ってるよ! 大学生のとき俺、*2探し回ったんだぞ」
「そうなんですか! 僕は本物を見たことがありますよ!」
 二十年前から怪奇の虜だった田野辺は、ある日、大学の同級生にサリーちゃんの目撃|情報を聞いた/ときを境に、授業も部活もそっちのけでサリーちゃん調査に奔走していたという。‥‥*3


 これに続く田野辺氏と大学の先輩との挿話は本筋に無関係なので省略します。
 単行本92頁6〜15行め、文庫版79頁17行め〜80頁9行め。

「ギンティの地元じゃ、サリーちゃんって呼ばれていたんだ」
 田野辺も二十年の時を経て知る事実に心を惹かれている。*4
 その晩は夜明けまでサリーちゃんの情報交換に明け暮れた。
 田野辺の集めていた情報によると、サリーちゃんは中央林間駅だけでなく、町田にも|出没していた/という。また、サリーちゃんの正体は火事にあった少女で、通院のために|中央林間駅や町田に出没し/ていたのでないかとも。
「俺はサリーちゃんの正体は女じゃなくてオッサンだって話も聞いたよ」
 この夜の会話で、僕らのサリーちゃんに対する探究心は蘇った。
 二〇〇七年、僕は、田野辺が編集した単行本『新耳袋殴り込み』のまえがきでサリー|ちゃんの思い/出を書いた。


 すなわち、2月7日付(2)に引いた、『新耳袋殴り込み』まえがき冒頭の「中学3年生の頃」の回想です。(以下続稿)

*1:文庫版ルビ「ようせんしや・よみがえ」。

*2:文庫版「そいつを」を挿入。

*3:文庫版ルビ「とりこ」。

*4:文庫版ルビ「ひ」。