瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

松葉杖・セーラー服・お面・鬘(16)

クリネックスティシューのCM(2)
 昨日の続きで、もう少しクリネックスのCMについて確認して置きましょう。
 このCMについては当時週刊誌等でも取り上げられたようですが、差当り小池壮彦の近著を参照してみました。
・MU NONFIX『怪奇事件の謎』2014年7月22日第一刷発行・定価1,000円・学研パブリッシング・309頁・新書判並製本

 155〜181頁「【第三章】芸能界"オカルト"事件」の176〜181頁「"呪われたCM"伝説の正体」が、醒めた視点からこの騒動を振り返っています。
 小池氏は冒頭、結論から始めます。176頁2〜8行め、

 クリネックスティッシュのCMというと、いまでも“呪われたCM”を連想する人は多いら/しい。リアルタイムでCMを見ていない世代にとっては“伝説”ということになるのだが、そ/れゆえに実情よりも誇大な形で伝わっている節もある。
 この噂の正体は何だったかというと、要するにテレビCMと週刊誌を利用した製紙企業のパ/ッケージ広告だったと見るほかはない。昨今では“ステマ”と呼ぶが、ネット時代以前の19/80年代には、テレビや週刊誌がこの手の話題を扱うのを見るのが楽しみだった。ある種のう/っとおしさを感じながらも、呪いの話が生活に潤いを与えていたのである。


 当時の私は心の狭い真面目人間だったので、こんな噂を愉しむ余裕がありませんでした。それはともかく、何時頃いったい何があったのか、小池氏の整理を引いて置きましょう。続く「岡田有希子の幽霊騒動と同じ"演出"手法」の冒頭、176頁11行め〜177頁1行め、

“呪われたCM”が流されたのは。1985年から翌86年のことである。そして呪いの噂の発/生は86年の9月だったわけだから、時期的に言って、同年夏の岡田有希子の幽霊騒動に連続し/て仕掛けられたことになる。言わば、柳の下の2匹めのドジョウを狙ったのである。


 アイドルにも興味のなかった私でも、昭和61年(1986)4月8日の岡田有希子の自殺が後追い自殺を誘発した、ということくらいは覚えています。しかし、幽霊騒動のことはよく覚えていない――あったかどうかの記憶も定かではありません。
 問題のCMについての記述を見て置きましょう。177頁9行め〜178頁10行め、

「赤鬼編」のCMは、1986年9月で放映を終了した。そして、このCMにまつわる呪いの/話を週刊誌が一斉に報じたのは同年11月のことである。噂というのはゲリラ的に発生するのに、/一斉に同じ時期に報じられたことからして、はじめからスケジュール通りのパブリシティだっ/たことがうかがえる。報道の内容は、CMを制作した電通の関係者と、メーカーの十條キンバ/リーの関係者が、呪いの噂に答えるという体裁だった。主に中高生の視聴者から電通に問い合/わせが殺到したというが、子供たちがCMを見てテレビ局に反響を寄せたならともかく、電通/に直接問い合わせるのは考えにくいので、たぶん作り話だろう。
 いずれにしても、このときに流された噂というのは、次のようなものだった。
【177頁】
 ①松坂慶子がノイローゼで入院した
 ②赤鬼を演じた子役が事故で死亡した→責任を感じた松坂慶子が自殺した
 ③CMスタッフが病気や事故の災難に見舞われた
 ④CMのBGMはかつて黒ミサに使用されていた曲で、歌詞も「今日もいい日だ死ね死ね死/ね」など不吉なものだった
 
 どれも事実ではないのだが、こんな噂があるということにしたのである。CMが9月で打ち/切られたのも呪いのせいだという話もあったが、これは松坂慶子とのCM契約が最初から9月/までだっただけである。噂によってCMが打ちきられたわけではないのだが、結果的に、呪い/の話が評判になったときには、すでにCMはオンエアされていないという状況が作られた。視/聴者(消費者)の飢餓感を喚起させる手法としてはありがちかもしれない。


 子供と女優が死んだとかいう話は聞いたかも知れないがはっきり覚えていません。CMを見た記憶がないから松坂慶子だとも知りませんでした。ただ、歌詞が実は「死ね死ね」という意味だった、と同級生から聞かされたことだけは、覚えていました。
 そこで本題に戻るのですが、怪人「三本足のサリーちゃん」の出現が昭和62年(1987)秋のことであるなら、昭和61年(1986)秋のクリネックスティシューのCMと混ざるはずがないのです。しかしながら、小林氏が「中学3年生の頃」は昭和62年度ではなく、前回の最後に指摘したように昭和61年度のはずなのです。そうすると、ここにある種の錯誤が生じていることになりますが、これについては実はもう1人、同様の錯誤を犯していると思われる人が出て来ますので、その人の証言を検討した上で、その理由を考えてみたいと思っています。(以下続稿)