瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

八王子城(1)

 八王子城跡には行ったことがない。
 行こうと計画したことはある。大学2年生の春、後輩も増えたのでサークル内に名所旧跡を散策する集まりを作って、東京近辺の史跡巡りを何回か実施したことがある。結局行かなかったのだが、1:25000地形図「八王子」を購入してルートを検討したとき、八王子城跡の登り口に「造形大学」とあるのを見て、随分不便なところにあるな、と思った記憶がある。
・椚国男『戦国の終わりを告げた城 八王子城を探るロッコウ ブックス)』平成3年7月20日初版印刷・平成3年7月25日初版発行・定価1359円・六興出版・269頁
 その前だったか後だったか、この本を図書館から借りて読んだ。内容は殆ど覚えていないが、55〜71頁「三章 忌み山となる」に、学校の怪談が載っていたのである。5節あるうちの最後、68頁2行め〜71頁(2行め)「造形大の怪談」がそれで、未だ学校の怪談について自分なりの追究をしようという野望(?)を持っていた私は、少なからぬ興奮を覚えたものだった。
 著者の椚國男(1926〜2015.6.15)は、築地書館HPの「椚國男略歴」によると八王子市大横町に生れ、明治大学文学部地歴科地理(二部)卒業、定年まで東京都立八王子工業高等学校社会科教諭を務め、多摩考古学研究会等で活躍した。
 東京造形大学はこの本が刊行された後の平成5年(1993)4月に、昭和41年(1966)4月の開学以来の所在地、八王子市元八王子町3丁目から現在地の八王子市宇津貫町に全面移転した。mixiの「東京造形・旧校舎愛好会」のトピックに拠ると、東京造形大学の旧校舎は痕跡を止めないまでに撤去されてしまったようだ。
 さて、2014年8月21日付「佐藤純弥「新幹線大爆破」(1)」の前置きにも述べたように私には怪異スポット巡りをする趣味はないので、低山歩きを兼ねた史跡巡りというつもりだった。しかし会が1年で雲散霧消してしまったため、実行されなかった。この会の最晩期のことは2015年6月8日付「大島弓子『グーグーだって猫である』(3)」に書いた。――もし実行しておればちょうど移転最中の東京造形大学を目にする機会もあったろうに、残念なことである。
 ちなみに版元の六興出版もこれと前後して、平成4年(1992)に倒産している。
 今回、この「造形大の怪談」を紹介しようと思ったのは、早い時期の、かなり質の高い報告であるにもかかわらず、殆ど注目されずにいること、加えて、学校は現存するけれども、舞台となった元八王子キャンパスにはもう何もないのだから、憚ることもあるまいと思ったからである。(以下続稿)