瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

関田一喜『坐禅の構造と実践』(1)

 2015年12月12日付「山本禾太郎「東太郎の日記」(34)」に予告した、山本禾太郎が米島清の筆名で応募した「第四の椅子」が第一次予選通過作品となった、昭和3年(1928)の讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」で、二等当選となった「河豚クラブ」の作者関田一喜の経歴ですが、漸く次の本を借りて若干の事実を知り得ました。
・関田一喜『坐禅の構造と実践』昭和六十三年五月十日新装版第一刷・定価1500円・木耳社・278頁・並製本18.5×12.0cm

 新装版*1とあるのですが奥付に初版の発行日は示されていません。奥付の前、278頁「おわりに」が「昭和五十五年五月吉日」付なので、昭和55年(1980)刊であろうとの見当は付けられるのですが。
 関田氏は海外での禅の普及に努めた人物で、英文の著書もあります。
・“Zen Training: Methods and Philosophy (Shambhala Classics)(September 13, 2005・Shambhala・264頁・Paperback) 未見。Amazon.co.jpKindle版のページ及びAmazon.comのページには、

Originally Published: New York: Weatherhill, 1975.

とあり、また、

KATSUKI SEKIDA (1893―1987) was by profession a high school teacher of English until his retirement in 1945. Zen, nevertheless, was his lifelong preoccupation. He began his Zen practice in 1915 and trained at Empuku-ji in Kyoto and Ryutaki-ji in Mishima, Shizuoka Prefecture. He taught at the Honolulu Zendo and Maui Zendo from 1963 to 1970 and at the London Zen Society from 1970 to 1972.

との著者紹介があります。
 そうすると、本書の新装版は関田氏の死去を受けて刊行されたことになりそうなので、新装版を見れば何かしら著者の逝去を悼むような文章か、没年月日を示した略伝くらいは出ているのではないか、と思ったのですが、奥付の上の「著者修禅略歴」は昭和55年(1980)の初版のままらしく、

1893年 (明治26年高知県高知市に生まれる。
1913年 高知護國禅会入会,坐禅修行。山本玄峯老師に参禅。
1928年 京都,八幡,丹福僧堂師家,神月徹宗老師に師事。
1933年 三島市,龍沢僧堂師家,山本玄峯老師に師事。
1953年 龍沢僧堂師家,中川宗渕老師に師事。
1965年 ハワイ,ココ庵禅堂・滞留。
1968年 ハワイ,マウイ禅堂・滞留。
1973年 ロンドン禅堂・滞留。
1974年以降 現住所――高知県吾川郡伊野町藤■

と、昭和49年(1974)までで終わっているのです。ちなみに高知県高知市の護國寺、京都府八幡市の圓福寺*2静岡県三島市の龍澤寺はいづれ臨済宗妙心寺派の禅刹で、山本玄峰(1866.正.二十八〜1961.6.3)神月徹宗(1879〜1937)はともに妙心寺の管長を務めた僧侶、中川宋淵(1907.3.19〜1984.3.11)は昭和26年(1951)に龍澤寺第9世山本玄峰から龍澤寺第10世を継いだ僧侶で、戦後たびたび渡米して禅の普及に努めています。――英文略歴と、年が微妙にズレていることも気になるのですけれども、とにかく2015年12月16日付「山本禾太郎「第四の椅子」(24)」に引いた、昭和3年(1928)12月11日付「讀賣新聞」に出た紹介記事に大正13年(1924)中等教員英語科検定試験に合格、とあったことと、戦後に海外で活躍したこととは矛盾しないようです。そして、明治44年(1911)3月市立高知商業学校を卒業、高知市に在住している、という年齢や出身からしても、同一人物と見て良かろうと思うのです。(以下続稿)
2024年2月24日追記国立国会図書館デジタルコレクションにて初版を閲覧出来た。但し国立国会図書館蔵書はカバーを外しているので、上に貼付した書影が初版のものかどうかは分からない*3
・昭和五十五年六月二十日発行・278頁・上製本
 鉛筆書きで「1500円」と書入れ。「著者修禅略歴」は新装版と変わりない。

*1:12月3日追記】昨晩投稿したときには桃色地のカバーに標題が横組みの書影が表示されていたと思ったのだが、今日の昼に見たら、初版のものらしく思われる、左上に縦組みの標題のある書影に変わっていた。……と思うのだが、錯覚か思い込みでずっとこの書影だったのかも知れぬ。しかし、ならば新装版のページなのに新装版でない書影が表示され続けていたことになる。墨絵は同じもので、初版(?)では表紙の右上にある賛は新装版ではカバー裏表紙左上に入っている。

*2:本書に「丹福」とあるのは「円福」の誤植。

*3:2024年2月24日追記に対する追記】この追記をして投稿して後に見たところ、書影が代わって(!)いた。私が見た新装版はもっと明るい色だったように思うのだが、とにかくこれが(画像検索などを掛けても)新装版の書影で間違いないようだ。