瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

田辺貞之助『うろか船』(4)

 昨日の続きで、3章め「翻訳雑感」について。
 118頁、1行めに2字下げで大きく明朝体で「翻 訳 雑 感」とあり、3行分空けて、2行取り6字下げでゴシック体で1節めの題「翻訳繁昌記」がある。2節めからも2行取り。末尾、131頁13行めに一回り小さく括弧で「(雑誌『文学界』)*1」と出典を示す。
 これは「文學界」昭和33年8月号(第12巻第8号)に掲載されている。初出誌は未見。
 執筆した日は、119頁8〜9行めに、

/‥‥。今朝の新聞に出ていた太田三郎氏の文によると、昭和三十年には一二四七点もの翻訳が出/たが、毎年この程度の数字が持続されているということである。‥‥

とあり、126頁8〜9行めにも、

 今日の新聞の太田三郎君の文章にも、翻訳に批評がないのは片手落ちだという文句があった/が、‥‥

とあって、この太田三郎(1909.10.10〜1976.10.11)の文章を見付けられれば特定出来る。
学生と訳本」120頁2行め〜。
訳者と出版社のかねあい」121頁14行め〜。12月8日付(2)に示した「目次」は「のかねあい」を欠く。
訳者の種類」123頁2行め〜。
訳者は役者」124頁12行め〜。
翻訳の批評」126頁7行め〜。
翻訳のむずかしさ」128頁5行め〜。

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 続いて4章め「風流小話ざんげ」について。
 章の頭は3章めに同じ。
無邪気な面白さ」132頁2行め〜。
一言一句もおろそかにするな」134頁13行め〜。
わかる話、わからない話」136頁5行め〜。
擬音の味」138頁2行め〜。
江戸小話のニュアンス」140頁6行め〜。
むすび」142頁9行め〜。これは「目次」に出ていなかった。
 143頁3行め、末尾に一回り小さく括弧で「(雑誌『文芸春秋』)*2」と出典を示すが、さらに4〜10行めに1字下げで、

あとがき――この拙稿が雑誌にのってから、読者の投書がいくつか転送されてきたが、そのう/ちに、初めに話した婆さんの当くじについて、聖ペテロが衣の前をまくったら一〇〇七番とい/うのは大間違い。実際は一〇一〇七番になる。真中に棒が一本あるのではないか、というのが/あり、大いに筆者を感服させた。また謎の話で「さっきみんなが考えたものだよ」というのは/ドイツの学生のなかでも語りつがれていると、渡辺照宏先生から御注意があった。更に朝鮮の/人から朝鮮小話を出さないかという提案らしい手紙をいただいたが、漢字と朝鮮字の混合のど/うにも読めない手紙なので、まだ返事を出さずにいる。

とある。
 初出は「文藝春秋」昭和33年7月号(第36巻第7号)だが未見。渡辺照宏(1907.2.10〜1977.12.27)は深川不動堂主監・渡辺照叡の長男、仏教学者で東京帝国大学卒業後、ドイツに留学している。(以下続稿)

*1:二重鍵括弧閉じは半角。

*2:二重鍵括弧閉じは半角。