瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(86)

 昨日の続きで、さらに突っ込んだ批判を加えることも、出来なくはないのだけれども、そこまで広げるだけの余裕も準備も出来ていない。かと云って、ちょっと虚脱状態で、かつ今日は、都内を西に東に移動して草臥れていて、俄に他のことに着手出来ないので、8月6日から準備して9月2日まで手を加えていた草稿を上げて置く。

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・文豪ノ怪談 ジュニア・セレクション(1)
 東雅夫 編『山怪実話大全』に岡本綺堂「木曾の旅人」が収録されていないのは、既に東氏も幾つかのアンソロジーに収録しているから――例えば2013年6月30日付(19)に書影を貼付した学研M文庫・伝奇ノ匣2『岡本綺堂妖術伝奇集』には「木曾の怪物」「蓮華温泉の怪話」ととも収録されている――だと思うのだが、『山怪実話大全』の「編者解説」では、一昨日引いたパート構成を紹介する段落(二三二頁7〜9行め)の前に「木曾の旅人」について触れているのだが、そこでは、二三二頁2〜6行め、

 
 近代怪談文芸の巨匠として、右の田中貢太郎と双璧を成す岡本綺堂には、『文豪山怪奇譚』/に収録した「くろん坊」をはじめ、記憶に残る「山の怪談」の名品が数多ある。なかでも/『近代異妖篇』(一九二六)所収の「木曾の旅人」(汐文社版『文豪ノ怪談ジュニア・セレクション〈霊〉』所収)は、山奥の杣小屋に暮らす父子と不穏な訪問者とのやりとりを通して、「見/えない同行者」の妖影が浮かびあがる屈指の傑作として名高い。*1

と、最新刊ながら「ジュニア」向けのアンソロジーを挙げているのであった。
 私は、怪談を話して聞かせるのはともかく、書いたものを(不気味な絵とともに)子供に与えるのには、高木敏雄が『童話の研究』に述べていたように反対なので、このシリーズは特にチェックしていなかったのだが、どんな解説になっているのかと思って借りて見た。
・文豪ノ怪談 ジュニア・セレクション『霊 星新一室生犀星ほか

・二〇一七年三月三十一日 初版第一刷発行(236頁)定価1,600円
 東雅夫(1958.4.11生)編、金井田英津子(1955生)絵。「文豪ノ怪談 ジュニア・セレクション」は全5巻(汐文社・四六判上製本)。
 奥付の前の頁にある「底本一覧」の8作品中、3番めの「岡本綺堂「木曾の旅人」には「『日本怪奇小説傑作集1』東京創元社」とあって、2011年6月25日付(14)に触れた、東氏と紀田順一郎(1935.4.16生)の共編の創元推理文庫のアンソロジーを使用している。
 93頁(頁付なし)「木曾の旅人*2」の扉、94頁から本文で1頁13行、1行40字、総ルビ。なお、見開きの左頁(奇数頁)の左側を2段組(1行28字)にして、本文中に「*」を附した語句の註(語釈や解説)。語句はゴシック体で1字分空白を挟んで説明は明朝体、2行め以下は1字下げ。この註がかなりの量があり、95頁は本文が1行しかなく、以下97頁3行、99頁8行、101頁2行、103頁8行、105頁4行、107頁5行、109頁は挿画で108頁左に註2行、111頁8行、113頁9行、115頁7行、117頁8行、119頁は挿画で118頁左に註2行、121頁9行、123頁8行、125頁9行、127頁9行、129頁8行、131頁6行と本文の量が一定していない。但し本文と註の間が1行分前後(半行分から1行半)空いてるのが127頁と131頁では2行分空く等、これも一定していない。
 註はなかなか詳しい。少し気付いた点を挙げる。
・101頁下段「黒沢口」の註に「三岳村」とあるが既に「木曽町」になっていたはず。

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 「一昨日引いたパート構成を紹介する段落」と云うのは8月5日付(24)のことだから、当初は8月7日付(26)として投稿するつもりだった。しかし8月6日付(25)で始めた白銀冴太郎「深夜の客」の検討をとにかく済ませてしまおうとして、後回しにしているうちにそのままになっていたのである。
 草稿は以上で、次に、この本の気になったところを切っ掛けに、「木曾の旅人」の初出について、従来注意されていない資料を指摘して置こうと思っていたのです。昨日「今回は7月4日付(23)の頃から始めて」と書いて、その切っ掛けが灰月弥彦の2018年1月24日21:19の tweetであるかのように述べたのですが、実はこの「木曾の旅人」の初出の方が、それよりも早く3月から気になっていたことなのでした。(以下続稿)

*1:ルビ「きどう/あまた//そま/」。

*2:ルビ「きそ・たびびと」。