瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

東京RADIO CLUB「東京ミステリー」(4)

 昨日の続きで、TBSラジオ東京RADIO CLUB 編『東京ミステリーとっておきの怖い話』二見WAi WAi文庫)について。
・第一章 理不尽にも開かれた冥界への扉(2)
【03】セピア色の湖に遊ぶ妖しい母子―――Y・Mさん(十七歳) 19~22頁
 「私が従兄弟のK君、N君といっしょに秋田県にある湖に旅行した中学二年」の「夏の終わり」のこと。
 投稿者の年齢は書籍刊行時ではなく放送当時、平成4年(1992)夏のものとして、17歳は高校2年生か3年生、中学2年は3年か4年前だから昭和63年(1988)夏か平成元年(1989)夏と云うことになる。
 「夕方近かった」が「一時間だけでもと」「貸ボートに乗っ」て『湖の真ん中まで」行って遊んでいたところ、「だんだん薄暗くなってき』て【19】「少し風が出てきたかと思うと、水面に三角波が立ち、ボートがグラグラ揺れはじめ」る。そこで「さっきまでいなかった」、「もう夕暮れなのに」「日傘をさし」た「若い女の人」と「かなりはしゃいでいるようすなのに、その声がぜんぜん聞こえない」「男の子」の乗った「ボート」が「五メートルばかり離れたところ」にあることに気付く。従兄弟たちは特に気にする風でもなく、N君が「フィルム」の余りで「私とK君を撮」影【20】、しかし投稿者は、題になっているように「そのボートの周囲だけ、まるで色褪せてしまった写真のような赤茶色をしてい」ることに(従兄弟たちはボートに気付いているがこうした異様さを感じていたかは不明)「拭いきれない異様な恐怖感に襲われ、ふたりに頼んで、急いで岸まで」戻り、「帰り道、旅館の並びにある写真屋にフィルムを出してお」く。
 21頁(頁付なし)挿絵には、背景に日が沈んで黒々とした山、かなり近い岸辺には芦が密生し、そしてボートには日傘を差した人物と、オールを持った若干小さい人物がぼんやり描かれる。投稿者たち、及びそのボートは描かれていない。
 1行分空けて結末、22頁5~14行め、

 つぎの日の夕方、写真をとりにいって、旅館の部屋でみんなで見ることにしました。
 一枚めの写真には、私とK君が写っています。
 二枚めは、私とK君のうしろに、あのボートが写っていて、女の人と男の子が冷たい目/でこちらを見ている写真でした。
 そして、三枚目は……、私とK君と……あの女の人と男の子が……おなじボートに乗っ/ている写真だったのです。
 その夜、旅館の人にその写真を見せると、重い口を開いて教えてくれました。もう、ず/いぶん前、その湖の真ん中で、若いお母さんと男の子の乗ったボートが転覆したそうです。/その湖のあまりの深さに、死体どころか、オール一本いまだに見つかっていない、という/ことでした。


 こういうのを読むたびに、写真を見せて欲しいと思ってしまう。心霊写真なんて好きでもないけれども。
 5月29日付(2)に一部を引いた「はじめに」、ラジオ番組を紹介した中に、

 本書では紹介できなかったのですが、番組のなかでは「心霊写真のコーナー」を設け、/何葉もの写真もこの手にとってみましたが、「なんだかよくわからないもの」に混ざって/「たしかに人の顔になった白い霧」や「写真に写っていない人間の身体の一部」も見るこ/とになりました。

とあるので、これが写真も添えての投稿であったら、余程岸谷氏たちも盛り上がったろうと思うが、しかしこのスタッフの「心霊写真のコーナー」説明からして、残念ながら(?)写真の投稿まではなかったようだ。
 この湖は、秋田県で「あまりの深さに」と云うのだから、水深423.4mで日本で一番深い田沢湖だろう。東岸の仙北郡田沢湖町田沢(現・仙北市田沢湖田沢)からボートに乗れたようだ。しかし直径6kmもあるので「真ん中まで」行くのはかなり疲れたろうと思うのだけれども。(以下続稿)