瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

事故車の怪(18)

・TBSラジオ東京RADIO CLUB 編『東京ミステリーとっておきの怖い話』(1)
 昨日の続きだが、今回は話の内容を記事の題にした。第二章「血も凍らせる怨霊たちの呻き」の7話め。
【17】いわくつきの不気味な中古車―――H・Sさん(十九歳) 72頁2行め~74頁5行め
 冒頭、72頁3~5行め、話の出所と発端。

 この話は従兄弟から聞きました。
 Aさんは私の従兄弟とは会社の同僚でしたが、入社した年に念願の車を買ったそうです。/といっても、まだ、働きはじめたばかりなので、中古車です。


 Aさんは毎日「外まわりの仕事」に、社用車の営業車ではなく「自分の車でまわ」る「ことにし」ていた。「そして、年の暮れ」に「お得意さんへの年末の挨拶まわりに出かけ」、「一日じゅう走りまわったので、さすがに疲れて、最後のお得意さんのところの駐車場」で休む。「すると、だんだん車内の温度が上が」る【72】。「エアコンの調整をしようとあちこちいじって」も温度は「ますます高くなる一方」。たまらず「窓を開けようと」するが「ピクリとも動」かない。「外に出ようと」するが「今度はドアもしっかりロックされたままで、少しも動かない」。「意識」が「しだいに薄れてい」く中で、Aさんは「暑いよ、暑いよ」と言う声を聞き、また「バックミラー」に「誰もいるはずのない後部の座席に、小さな女の子が座ったまま、すごい形相で苦しみ悶えてい」るのを見たところで、Aさんは「意識を失ってしま」う。
 そこへお得意さんの「ちょうど車を出しにきた会社の人がい」たお蔭で、Aさんは「命を【73】落と」さずに済む。
 この話も結末に理由が明らかにされる。74頁2~5行め、

 翌日、Aさんは車を買った中古車店に行き、話をしました。
 すると、そこの主人は青ざめ、申し訳なさそうな顔をして、こういったといいます。
「じつは、あの車では女の子が死んでるんです。真夏に車のなかに子供を残したまま。母/親がパチンコをしているあいだに、子供は脱水状態になってしまいましてね……」


 2018年9月30日付(15)等に見たように、昭和62年(1987)には「呪いのソアラ」の話が流行っていたが、この話は繰り返し事故を起こして転売されるうちに驚くほど安値になっていた、と云う展開にはなっていない。夏に車内で死亡事故を起こした乗用車が、年末にまた同様の事故を起こしそうになった、しかも、冬の、夕方に、暑さで「脱水症状を起こして」意識不明になると云う異常さがこの話のポイントなのだろう。
 この手の話を読む限り、簡単に廃車にはされないようだから、この後、転売されて、どんどん安くなって、‥‥と云う展開に今はなっていようか。(以下続稿)