瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

青木純二『山の傳説』(01)

 本書の諸版については、8月11日付(098)に挙げて置いた。
 今回、初版(丁未出版社)と覆刻版(大空社)を並べることが出来たのでメモして置く。
 ともに上製本、但し私の見た初版は図書館で新しい表紙にて製本し直されている。覆刻版は『柳田國男の本棚』シリーズ共通の装幀で、国立国会図書館デジタルコレクションでも初版を閲覧出来るが、白黒写真のため装幀は(原装なのかも含めて)不明。
 初版は四六判だが覆刻版はA5判、しかし原寸のまま、拡大していないので余白が多くなっている。
 初版の扉以下、奥付まではほぼ同じ。覆刻版は初版の扉の前に、『柳田國男の本棚』シリーズ共通のカーキ色でやや厚い扉、以下、本文用紙に同じで「刊行のことば」3頁(頁付なし)1頁白紙、「凡例」1頁(頁付なし)裏は白紙、「『柳田國男の本棚』 第五巻 収録内容」1頁(頁付なし)裏は白紙、合計10頁分多くなっている。
 覆刻版は初版の扉も本文共紙だが、初版はやや厚い白い紙を使用している。文字は全て横組みで匡郭の上部に「説 傳 の 山/篇スプルア本日著 二 純 木 青」、最下部に「行 發 社 版 出 未 丁 京 東」とあって「未 丁」の右側に「び・て い」と縦組みのルビ。
 次いで口絵、右が上で横転した写真、左上(写真の下左)「望 眺 の 岳 ヶ 燒」のキャプション。初版はアート紙だがこれも覆刻版は本文共紙なので不鮮明になっている。国立国会図書館デジタルコレクション(4コマめ)は、より不鮮明である。
 柳田國男「山と傳説」12頁、「自  序」3頁、白紙1頁、「目  次」9頁、白紙1頁、
 1頁(頁付なし)中扉、匡郭の左上に縦組みでやや大きく「山 の 傳 説」左脇、3字めと4字めの間から小さく「日 本 ア ル プ ス 篇」と添える。裏は白紙。
 次いで、口絵と同じ体裁のアート紙の図版「岳ヶ槍た見らか岳燕」が初版にはあるが、覆刻版には存しない。国立国会図書館デジタルコレクション(20コマめ)はこの図版を欠いている。
 そして3頁1行め「1 北アルプス」とあって214頁まで。
 214頁と215頁「2 中央アルプス」の間、図版「スプルア央中た見らか槍」があって初版はアート紙、覆刻版は本文共紙で不鮮明。国立国会図書館デジタルコレクション(126コマめ)はこの図版を欠いている。
 246頁と247頁の間に図版「スプルア南た見らか岳石赤」があって初版はアート紙、岩肌が鮮明であるが覆刻版は本文共紙のためやはり不鮮明になっている。なお、挿入位置は「中央アルプス篇」の最後、239頁と240頁「3 南アルプス」の間であるべきだが、偶数頁末で上手く話の切れ目になっている、南アルプス篇【5】山  椒  魚赤石岳)の次に挿入したもののようである。
 しかし「南アルプス篇」の最後、309頁の裏は白紙なので、240頁を白紙にしてここに図版を挿入し、241頁から「南アルプス篇」にすれば良かったのではないか。なお、この図版のキャプションに、国立国会図書館デジタルコレクション(142コマめ)には加筆訂正がある。すなわち「南」を×で消し下に「北」、「石赤」を二重線で消し下に「槍」と書き加えて「スプルア北た見らか岳槍」と直し、さらに右側に写る尖峰の下、縦書きで「 ↑ 小槍」と足している。国立国会図書館デジタルコレクションの図版は覆刻版以上に不鮮明であるが、確かにこの加筆者の指摘通り、槍ヶ岳の北西に位置する小槍で、しかも北を向いて撮影したらしいから遠景も中央アルプスではない。どうやら「スプルア央中た見らか槍」と「スプルア南た見らか岳石赤」は、写真を取り違えているようだ。
 奥付、下部に匡郭があって、縦線で3つに仕切り、右枠に縦組みで標題・定價、中央に横組みで著作者・發行者・印刷者・印刷所、左枠に縦組みで発行所。その上、右寄りに印刷・發行年月日が縦組み2行、覆刻版は他は余白になっているが初版はその印刷発行日の左、下寄りに紫色の筆記体の印で「Teibi」と波打つ下線。検印であろうが検印紙はない。
 初版は奥付の裏に広告があるが覆刻版は「第一期収録一覧」第七巻まで。次いで「柳田國男の本棚」の奥付、裏に「近代文学作品論叢書」の広告。(以下続稿)

【御提案】瑣末亭編で青木純二『山の伝説』を復刊しませんか。
 伝説の取り扱いについて、柳田國男の考え方に近い私は本書を余り評価していません。しかしながら、昨今の山の怪談ブームの中にあって、多くの後進に(良くも悪くも)霊感を与えた本書が等閑視されている現状を見るに忍びず、さらに多くの影響作が発掘されるであろうことを願って、敢えて名乗り出るものです。
 各話に【典拠】と【展開】として、青木氏の依拠した文献、そして『山の傳説』の影響を受けた伝説集を挙げ*1、本書が如何に多くの影響を及ぼしているか、附記します。
 さらに解説として「青木純二『山の伝説』の成立と展開」そして「青木純二略伝」を附け、初めて本書及び著者について、正当な位置付けを試みます。

*1:当初は可能な限り挙げるつもりだったが、現在は昭和40年代頃までを中心に、冊数を絞って点検する予定。