瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

中学時代のノート(23)

・昭和56年頃に聞いた怪談ノート(20)
   後篇⑩ 怪談(その十二)南方に出征した先輩(その十三)死んだと知らせる

 1行空けて27頁15行め~29頁5行め、

 戦争中、兵隊は田舎にいた。なぜかというと、田舎の家の/家は広いし、敵にやられる失敗からだった。
 そこでは二階をかりていた。それで風呂に入りに行って/「わしが一番乗りや」と、来てみると先客がいた。「あれ」っと/思っていると、その湯かた姿の男は、こちらをむきかけた。横/【27】顔がみえたかと思うと、フッと消えてしまった。そのときまで/に同じ部屋の兵隊さんも風呂からあがって、二階にきてい/たが、みんなおどろいた。一ヶ月ほどまえに南方に行った、先/輩なのであった。かえってきたのかナなどと言っていた。
 翌朝村の人が浜で、「こっち来てみろ」と大声で叫*1ぶ。行っ/てみると、きのう、部屋にあらわれた人だった。魚につつかれ/たらしく、きずだらけだった。(それで死にぎわに、親しい人に/魂が会いに行っくたァのは本当やっていうことや)
 
 続いて例としてクラスの竹■という子を使って話をした。
「もし竹■のばァちゃんがしんだとき、に竹■にあいに来る/かもしれへんでェ、おまえかわいいなァおこづかいあげよと/か言ってるうちに、電話がかかってきて、おばァちゃんしんだァ/って、魂は死にぎわに親しい人にあいにくんやって」と。
これはもちろん作り話。次もよくある話である。
 
 AさんとBさんといて、本をよんで魂のことを読んで、/おたがいに死んだら、死んだって知らせるために足のう/らをくすぐろォと言うことにあいなり、その日はわかれ/【28】た。その夜(?)、Bさんがねてると、足のうらがくすぐったい。/ねこでもおるんかいナって、見まわしてみるがいない。で/もそういうことはつづく。と、電話がかかってきた。Aさ/んが死んだと言う内容だった。それで足のうらがくす/ぐったかったわけがわかった。


 誤字や衍字、妙な当て字や言い回しを修正し、若干〔 〕に補足を加えた校訂案。

 戦争中、兵隊は田舎にいた。何故かというと、田舎の家は広いし、敵にやられる心配からだった。
 そこでは二階を借りていた。それで風呂に入りに行って「わしが一番乗りや」と、〔二階の部屋に〕来てみると先客がいた。「あれっ」と思っていると、その浴衣姿の男は、こちらを向きかけた。横顔が見えたかと思うと、フッと消えてしまった。そのときまでに同じ部屋の兵隊さんも風呂から上がって、二階に来ていたが、みんな驚いた。一ヶ月ほど前に南方に行った、先輩なのであった。還って来たのかナなどと言っていた。
 翌朝村の人が浜で、「こっち来てみろ」と大声で呼ぶ。行ってみると、昨日、部屋に現れた人だった。魚につつかれたらしく、傷だらけだった。(それで死に際に、親しい人に魂が会いに行くたァのは本当やっていうことや)
 
 続いて例としてクラスの竹■という子を使って話をした。
「もし竹■の婆ちゃんが死んだときに竹■に会いに来るかもしれへんでェ、お前可愛いなァお小遣い上げよとか言ってるうちに、電話が掛かってきて、お婆ちゃん死んだァって。魂は死に際に親しい人に会いにくんやって」と。
 これはもちろん作り話。次もよくある話である。
 
 AさんとBさんといて、本を読んで魂のことを読んで、お互いに死んだら、死んだって知らせるために足の裏をくすぐろォということになり、その日は別れた。その夜(?)、Bさんが寝てると、足の裏がくすぐったい。猫でもおるんかいナって、見回してみるがいない。でもそういうことは続く。と、電話が掛かってきた。Aさんが死んだという内容だった。それで足の裏がくすぐったかった訳が分かった。


 これらの話も、平野威馬雄の本を見ていけば載っているのかも知れない*2。(以下続稿)
10月2日追記】原本の当記事に関連する写真を貼付した。

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28頁

*1:振仮名「よ」。

*2:10月27日追記】(その十二)南方に出征した先輩の話、最後のコメントを括弧に入れているのは「死に際」ではないからだろうか。遺骸の漂着――故国への帰還とともに魂も還って来たことになっている。皆の前に姿を見せた丁度その頃、浜に打ち上げられたのであろう。