瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

夏目漱石『夢十夜』の文庫本(6)

 昨日の続きで近藤ようこの漫画の①単行本と②岩波現代文庫版を比較しつつ、今回は145~147頁「あとがき」について見て置こう。
 145頁(頁付なし)上部中央に小さく「あとがき」とあるのは同じだが組み直されている。146~147頁見開きもレイアウトは同じだがやはり組み直されている。
すなわち、①は1行35字だったのが②は34字である。146頁は①は18行だったのが②は19行である。147頁は①は17行、②は18行で最後に2行取り下寄せでやや大きく「近藤ようこ  」とあるのだが②は左に殆ど余白がなく窮屈である。下部に各頁に円が2つ、唐草風の装飾を時計で云うと4時と8時の位置の外側に伴い、1つめの下左と2つめの下右の装飾は接していて、そこに滴のようなものが描かれる。円の中には本篇から風景などを抜いて収めている。すなわち146頁右の円には47頁5コマめ、土手の上の藁葺きの家と柳(第四夜)、左の円には64頁の、楢の木に繋がれて草を食む白い馬(第五夜)、147頁の右の円には122頁3コマめ、「八幡宮」の額と鈴(第九夜)、左の円には132頁3コマめ、果物を盛った籐籠(第十夜)が、それぞれ若干縮小されて収められている。
 文章の冒頭を抜いて置こう。146頁①1~4行め②1~5行め、改行位置は①「/」②「|」で示した。

 初めて『夢十夜』を読んだのは大学時代、口承文芸の授業でのことだった。
 小泉八雲の再話でも知られる、「六部殺し」「こんな晩」系の怪談(民俗学は世間話というジャンルになる)と、『夢十夜』第三夜との関連について学|んだ。
 もう四十年も前のことで、よく覚えていないのだが、‥‥


 國學院大學文学部助教授であった野村純一(1935.3.10~2007.6.20)の授業であろう。――①では( )の注記を若干小さくして行数が増えないようにしていたが②は同じ大きさで、ここで1行増えている。
 146頁①8行め②9行め、

 今回、漫画化の話をいただいて改めて読むと、‥‥

 
とあるから、岩波書店側からの依頼であったようだ。現在の岩波書店ウェブサイトには掲載されていないので、初出がどんなものであったかは今から確認出来ないが、連載された2016年は漱石歿後100年、そして単行本刊行の2017年は漱石生誕150年と云うことでこのような企画が立てられたのであろう。
 当時、岩波文庫のカバーもこの漫画、8頁1コマめ(第一夜)の絵の、月を黄色に着色したものが掛けられていたようだ。岩波文庫創刊90年記念の企画でもあったようだ。


 さて、女の屍体が洋髪にネグリジェだが、これについては147頁1~4行めに説明がある。

 第一夜を読んだ時、ずいぶんと西洋風な話だと思った。だから漫画も純和|風/でなく無国籍な火事の風俗で描いた。あとで漱石は第一夜を、ラファエル|前派/の画家ロセッティの「祝福されし乙女」からインスパイアされて書いた|との説/を知り、我が意を得たりの気分になった。


 続いて、第二夜と第三夜についても工夫した点について少しずつ説明している。
 ①はここまでであるが、②は白紙1頁挟んで149頁(頁付なし)大きなコマ(12.8×8.5cm)の右上に宋朝体で「岩波現代文庫あとがきにかえて」少し空けて「に」の高さから大きく「第十一夜」、左下に座布団の真ん中で丸まった、首にリボンを付けた黒猫のカット。150~156頁の漫画はオリジナルだが154頁で主人公が擦れ違う女は2コマめ「ストレイシープ」と言うのである。(以下続稿)