瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

祖母の蔵書(34)大沢在昌

 いよいよ全貌が見えて来たようである。いや、見えて来たように、思う*1
 地元の古本屋に相談して見たところ、昭和の流行作家の作品は買い取らないそうだ。そうすると、素直に流行作家の作品を読んでいた祖母の蔵書はどうにもならないことになる。しかし、それも分かる。高度経済成長期に本を買って読んだ、祖母よりも20歳若い(昭和10年生)、或いは30歳くらい若い(昭和20年生)人たちが寿命を迎えて、或いは弱ってしまって自宅を処分して施設に入居するとて「終活」して、読まなくなって久しいながらも何となく仕舞い込んできた蔵書を処分しているとしたら、今まさに、かつての流行作家の本が、特に大量に放出されていることになる。しかし、もうそこまでの需要はない。読まれ続けている作家なら字を大きくした改版の新品が書店もしくは通販で手に入る。字が小さくて古びた文庫本など要らないだろう。
 私はかつて、私が図書館を利用し始めた頃に書棚に並んでいた昭和40年代、50年代の文庫本が、古びた区立図書館にはまだあるので懐かしく思っていたところが、気付いたら除籍(廃棄)処分されて次々姿を消して行くのが何とも切なく、それを記録にとどめて置こうと思って当ブログの[改版]カテゴリに、都内の複数の公立図書館で借りた同じ本を何冊も並べて比較した記事を上げて行ったのである。当時は都内勤務で図書館を通勤の途次に幾つも廻ることが出来、そうでなくても以前住んでいた区の図書館に通勤定期に幾らかの回数券代を足してわざわざ出掛けていたくらいだから、改版・改装の様相を全てではないにしてもある程度、つかむことが出来、映画化関連の期間限定のカバーなど、Twitter 等で取り上げられたこともあった。
 しかし、その後都内勤務でなくなって、毎日のように勤務の行き帰りに本を10冊以上抱えて歩くような生活ではなくなった。2駅分歩く間に複数の区の図書館を何館も梯子出来るような環境にない。都下の図書館は移動するだけで疲れてしまう。気軽に出掛けられないので、とにかく書棚を一巡して、これは別の区に改版・改装されたものがあったな、と借りて、後日別の区の図書館でその改版・改装されたものを借りてみる、そんなことが出来なくなった。
 版元は、まだ売れている本についてしきりに改版・改装を繰り返すようになった。少しでも売ろうと云うのであろう。字が大きくなって、それは良いことなのだろうけれども、いよいよ昭和の文庫本は除籍されることになるだろう。もう追い着こうと云う気分にならない。
 ところが、その、今や公立図書館では姿を消しつつある、昭和の文庫本、単行本が、祖母の書棚・クローゼットには大量に所蔵されているのである。
 しかし、時間がない。都内勤務ではないので、祖母の蔵書を近い時期のものと比べて、変遷を確かめ、的確にメモを取ることも出来ない。
 勿体ないと思うが、売物にもならない。古本屋は買い取ってくれない。いや、遺品処分でトラックで全て引き取りますみたいな風にして一括で引き受けたものを店頭に出すだけでも、多いくらいだろう。ブックオフは、バーコードがあれば5円でも買い取ってくれるが、ないと買い取ってくれない。押し付けることは出来るようだ。古本としての商品価値はなく、そして図書館からは姿を消して行く。今は数が多いとしても、今後急速に数を減らして行くこととなるであろう。
 いや、図書館を梯子出来るような場所に勤務していて、当時はそこそこ忙しかったから毎日記事を上げるための繋ぎとして、複数の図書館にある本を手許に集めて、1回めの記事は諸版のリストで、そう手間が掛からないから[改版]の比較をやっていたのだった。今、私は幾つも書くべきことを抱えているので、折角の材料だけれども、目録作成に止めざるを得ない。
 さて、前置きが長くなったが、大沢氏も私は読んでいないし、TVドラマも大沢氏原作と意識して見た記憶がない。祖母は、大沢氏が直木賞を受賞した平成6年(1994)頃に、何冊か大沢氏の本を買って、読んで、そしてクローゼットに仕舞い込んでいた。
集英社文庫
お 9 1『悪人海岸探偵局』1990年7月25日 第1刷・1994年2月7日 第5刷・定価476円・341頁
※ 帯あり「直木賞受賞<第110回>作家の話題作
 書影は、改装されたものが表示されるので省略。カバー表紙折返し最下部右に明朝体横組み「カバー・中 環/AD・岡 邦彦」とあり。しかし困るのは、今後「ISBN/ASIN」を変更せずに改装してしまった場合、現在表示出来ている、祖母の蔵書と同じ書影とは違う書影が表示されてしまうことである。
 大沢氏は平成5年(1993)下半期、第110回直木賞を受賞している。平成6年(1994)1月13日に発表されているから、これを承けての増刷・帯で、祖母はこのとき、集英社文庫から出ていた大沢氏の作品5点を買い揃えたようだ。
お 9 2『無病息災エージェント』1990年8月25日 第1刷・1994年2月15日 第4刷・定価476円・321頁
※ 帯あり「直木賞受賞<第110回>作家の話題作」は『悪人海岸探偵局』に掛かっていたものに同じ。裏表紙側、カバー裏表紙折返し「集英社文庫|大沢在昌作品|」と同じ5点を紹介文2行とともに「大沢在昌の既刊・好評発売中」として挙げる。
 但しカバー裏表紙折返しではの2点めにあった本書は、この帯では5点め「絶対安全エージェント」とシリーズ作なので4点めに移されている。すなわちこれも、直木賞受賞を受けての増刷である。
 これも改装された書影しか表示されないので省略。カバー表紙折返し最下部右に明朝体横組み「カバー・中 環/AD・岡 邦彦」とあり。
お 9 3『ダブル・トラップ』1991年11月25日 第1刷・1994年1月30日 第6刷・定価515円・325頁

 上記2点と同じ帯が掛かっていたのではないかと思われるのだが、ない。カバー表紙折返し最下部右に明朝体横組み「カバー・荒川じんぺい」。
お 9 4『死角形の遺産』1992年6月25日 第1刷・1993年6月30日 第5刷・定価485円・317頁 本書のみカバー裏表紙折返し「集英社文庫|大沢在昌作品|」が本書までの4点である。しかし先行して買っていたとも思えないのだがどうだろうか。カバー表紙折返し最下部右に明朝体横組み「カバー・荒川じんぺい」。
お 9 5『絶対安全エージェント』1991年1月25日 第1刷・定価466円・286頁
※ 帯あり「今月の/新刊」裏表紙側「集英社文庫大沢在昌の本」として既刊4点を刊行順に、直木賞受賞の帯の裏表紙側と同じ2行の紹介文を添える。
 これも改装された書影しか表示されないので省略。カバー表紙折返し最下部右に明朝体横組み「カバー・中 環 /A D・岡 邦彦」とあり。
・角川文庫 角川書店
角川文庫8461/お 13-1『夏からの長い旅』平成三年十二月二十五日 初版発行・平成六年 一 月 二 十 日 七版発行・定価456円・角川書店・277頁角川文庫6902/お 13-3『標的はひとり』昭和六十二年十一月二十五日 初版発行・平成 五 年 十 月 十 日 七版発行・定価505円・角川書店・324頁
 書影は表示出来ない。
角川文庫9809/お 13-9『漂泊の街角』平成七年十月二十五日 初版発行・定価505円・角川書店・311頁講談社文庫
お 45-1『野獣駆けろ』1986年8月15日第1刷発行・1993年5月25日第5刷発行・定価485円・319頁お 45-2『氷の森』1992年11月15日第1刷発行・1993年9月14日第3刷発行・定価641円・494頁廣済堂文庫 お3-3『女王陛下のアルバイト探偵』平成4年1月1日 初  版・平成7年8月30日 6  刷・定価466円・廣済堂出版・334頁 これも、整理に入る度に少しずつ掘り出している。今後見付けたら、この後に追加して行くこととしよう。(以下続稿)
9月7日追記9月5日付(40)の最後に述べた、寝間の本立てに大沢氏の本が4冊あった。いづれ『アルバイト探偵シリーズ』で、祖母はこのシリーズをかなり気に入って、愛読していたようだ。但し2冊め(短篇集)と今世紀に入ってから出た6冊め『帰ってきたアルバイト探偵』はない。3冊め(長篇第1作)はダブリ。先に廣済堂文庫から見て置こう。シリーズの4冊めと5冊め*2
廣済堂文庫 お3-4『不思議の国のアルバイト探偵』平成4年8月1日 初  版・平成7年1月20日 2  刷・定価466円・廣済堂出版・348頁廣済堂文庫 お3-5『アルバイト探偵 拷問遊園地』平成6年8月1日 初  版・定価534円・廣済堂出版・375頁 このシリーズはその後講談社文庫から再刊されている。1冊めと3冊め。
講談社文庫お 45-6『アルバイト探偵』1995年7月15日第1刷発行・定価485円・286頁講談社文庫お 45-8『女王陛下のアルバイト探偵』1996年7月15日第1刷発行・1997年6月30日第5刷発行・定価563円・361頁 現在は角川文庫から『アルバイト・アイ』のシリーズ名で、そろぞれ改題されて刊行されている。
2023年5月31日追記】客間のクローゼット右側から。
カッパ・ノベルス『氷舞――新宿鮫Ⅵ――1997年10月25日  初版1刷発行・定価848円・光文社・438頁※ 赤地の帯あり、「最新刊」時のもので表紙側は横組みで書影に表示されているものより情報が多い。裏表紙側は縦組みで左に「「氷舞」刊行記念/特製抱きマクラ〝ダッコ鮫〟/100名様 プレゼント 」の説明があって最後に「<締切り> 97年12月31日(当日消印有効)」とある。裏表紙側折返しの右下隅を三角形に黒地にしてゴシック体横組み白抜きで「氷舞/プレゼント/応募券」とあるのがそのまま残っているから祖母は応募していない。
2024年3月18日追記】客間クローゼット左側の床の上にあった段ボールより。
ケイブンシャ文庫 419/お 04-02『感傷の街角』1991年6月15日 第1刷・1994年2月15日 第3刷・定価544円・勁文社・319頁 本体表紙や扉や奥付などにもないが、カバー表紙にのみ「失踪人調査人・佐久間公シリーズ①」のシリーズ名が入る。
・角川文庫10327/お 13-12『暗黒旅人』平成 九 年四月二十五日 初版発行・平成十一年五月 三 十 日 七版発行・定価533円・角川書店・305頁光文社文庫 お 21-8『無間人形 新宿鮫2000年5月20日 初版1刷発行・定価724円・587頁※ 帯あり「最新刊」
※ 栞あり「KOBUNSHA BUNKO」タツノオトシゴのイラストで片面は無地に緑色で刷り、もう片面はエンボスで刷毛目を出した赤地に同じ柄を白く抜く。
※ 巻4つ折チラシ「文庫のしおり」2000⑤No.32
 ASIN ではこの書影が表示されてしまうが、恐らく後の改装で、祖母の蔵書の初版1刷とは異なる。最上部に金地に白抜きで大きく著者名、次に大きくゴシック体で標題、そして 2/3 ほどはゾンビのような肌が苔むしたようになった人が2人並び、額から肩までを見せて左は口を噤んで大きな眼でこちらを凝視、左は目を細め少し仰け反るようにして大口を空けており、この2人(恐らく同一人物のポーズ違い)の間にシリーズ名等が縦組みで入っていた。
 これらはもっと早くにメモするつもりだったのだが、3冊しかない割に入力に時間が掛かりそうで、今は止めてしまったが当時は毎日投稿することにしていたから、どうしても新記事作成を優先して旧記事に追記するのが億劫になっていたのである。しかし改めて当記事の冒頭を読み返して、読みが甘かったことを猛省する次第である。

*1:と、10日ほど前に草稿を書いたときには思っていたのだが、昨日数百冊を掘り出して、早速見込みが甘かったことを思い知らされている。しかし改稿する準備も出来ていないので(この前置きは改めず)そのまま投稿した。

*2:2023年6月10日追記】カバー背表紙の最上部に番号があることをメモし忘れていた。廣済堂文庫は某巨大新古書店では取ってくれなかったのでまだ祖母宅に残してあるので確認出来た。『不思議の国のアルバイト探偵』は「320」、『拷問遊園地』は「419」である。