瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

阿知波五郎「墓」(1)

 これも主題は9月23日付「「ヒカルさん」の絵(02)」から一貫して同じです。いえ、以前からこの小説には注意していて、10月1日付「閉じ込められた女子学生(1)」に引いた日本文学芸術学部写真学科の話に気付いたことで記事に出来そうだと思い、そして、掲載している本を全て手許に揃えることが出来たので書き始めたので、9月27日に以下の記事を書き上げたときには「「ヒカルさん」の絵(11)」と題していました。しかしながら、2014年9月30日付「「ヒカルさん」の絵(01)」があったからその流れで「「ヒカルさん」の絵」と題したので、この“夏休みに閉じ込められる”と云う話の題としては適当とは云えません。そこでこれも改題しました。

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 夏休みの書庫に閉じ込められると云う設定の小説があります。
鮎川哲也『こんな探偵小説が読みたい』一九九二年九月一五日発行・定価3107円・晶文社・445頁・四六判上製本

 この本に纏められた連載「幻の探偵作家を求めて」については、アジアミステリ研究家松川良宏のサイト「アジアミステリリーグ2011年6月30日「鮎川哲也『幻の探偵作家を求めて』(正・続・番外・新)」に詳しい紹介があります。
 連載時の「幻の探偵作家を求めて」には、本人もしくは遺族を訪ねた作家について、作品を再録していました。しかしながら第一弾の単行本『幻の探偵作家を求めて』には作品を収録しませんでした。続篇の『こんな探偵小説が読みたい』は、表題からも察せられるように、作品も収録されています。
 ここに取り上げようとしている小説「墓」もこの『こんな探偵小説が読みたい』に収録されているのですが、初出誌には「幻想肢」と云う別の作品を掲載していました。作者は医師で医史学研究家として知られていた阿知波五郎(1904.4.20〜1983.2.12)です。初出誌は見ていませんが『こんな探偵小説が読みたい』には12人取り上げられている最後*1、401〜440頁「12 『めどうさ』に託した情熱――阿知波五郎*2」として、401頁(頁付なし)扉、402頁(頁付なし)晩年の写真、403〜413頁が尋訪記で良子未亡人と長女・西川祐子(1937.9.15生)にインタビューしています。インタビュアーは鮎川哲也(1919.2.14〜2002.9.24)に、山前譲(1956.1.7生)と掲載誌「EQ」編集部の北村一男。
 445頁の裏、奥付の前の頁の「初出一覧」には、14行め「 『別冊宝石』昭和26年12月号」とあります。なお、4行分空けて15〜17行め、

 本書は新字・新仮名を原則としました。また読みやすさを/心がけ,原文を損なわない範囲で感じを平仮名にあらためま/した。(編集部)

とあります。
 この「墓」及びその掲載号ですが、楢木重太郎の筆名で『宝石』二十万円懸賞短篇コンクール(第5回宝石賞)に応募した短篇小説で、森下祐行のサイト「海外ミステリ総合データベース MISDAS(Multi-Information System of Detective And Suspense stories)」に拠ると、「別冊宝石」第4巻2号(通巻14号二〇万円懸賞コンクール/新人競作二十五篇集・昭和26年12月10日発行・定価180円・宝石社・406頁)132〜146頁に掲載されました。初出誌は未見。川口則弘のサイト「文学賞の世界」の「宝石短篇賞 受賞作候補作一覧*3」及びWikipedia「宝石賞」の項に拠ると、同コンクールは入選作なしで、優秀作5篇、佳作3篇、選外佳作7篇(さらに候補作10篇で25篇)、「墓」は選外佳作です。(以下続稿)

*1:配列は初出誌掲載順。

*2:ルビ「あちわごろう」。

*3:再録の欄が空白になっていますが『こんな探偵小説が読みたい』を補うべきです。