瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

松本清張『砂の器』(08)

 野村芳太郎監督映画『砂の器』については、2017年8月8日付(06)に取り上げた樋口尚文『『砂の器』と『日本沈没』70年代日本の超大作映画』の解釈について、それから山田洋次が脚本執筆時のことを何度か回想しているが、その異同についても検討するつもりで、何度か材料を揃えかけたことがあるのだけれども、そのままになっていた。
 ところが3月12日付「斎藤澪『この子の七つのお祝いに』(1)」に述べたように、先日、増村保造監督映画『この子の七つのお祝いに』を見て、30代半ばの役で登場した岩下志麻(撮影時41歳)が、高校時代の写真とてセーラー服姿で、しかしそのまんまの顔で写っていたのに仰天して、映画『砂の器』の加藤剛と春田和秀を引き合いに出したのだけれども、それで何だか気になってしまったのである。それで某区立中央図書館に出掛けた折に、何となく映画の棚や戯曲の棚を見てみたのだが、戯曲の棚に以前、市川崑監督映画『おとうと』の脚本を参照するために、別の区立図書館で借りたことのあるダヴィッド社の『年鑑代表シナリオ集』が何冊か並んでいたのである。全て、恐らく破損のために製本屋が掛け替えた表紙になっており、しかも欠本が多く昭和期の分は20年分にも満たない*1。当座の目当てである『この子の七つのお祝いに』が載っているかも知れない1980年代のものは1冊もなく、『砂の器』の公開年のものもなかった。それでも何となく1冊ずつ取り出して巻頭口絵や目次を眺めて行くうち、次の1冊に「砂の器」の脚本が載っていることに気付いたのである。
シナリオ作家協会 編『年鑑代表シナリオ集一九六八年版』一九六九年六月一日初版発行・定価860円・ダヴィッド社・432頁・A5判上製本

 アート紙の扉に続いて、アート紙の口絵が8頁(頁付なし)。
 1頁(頁付なし)は「一九六八年版・目 次」で、その11行め、11篇収録の11番めに、

砂の器<特別賞>    橋本  忍/山田 洋次・・・三六九

と出ているのである。漢数字は半角。
 2頁は白紙。
 3頁から本文で、細目も見て置こうと思ったのだが、私の借りている本は口絵の一部が切り取られ、かつ本文も一部落丁しているので、これは割愛する。幸い、369~406頁「砂の器」は完全に保存されている。掲載の形式は同じで、各作品、3段組の1頁めの上段と中段は2段抜きで右端に標題と脚本家名、その左の枠は横線で上下に仕切ってスタッフとキャストを示す。
 「砂の器」は上段に位置する題の、右上に「《特別賞》」と添え、その左下、中段に位置して「橋 本    忍/山 田  洋 次/――松本清張砂の器」より」とある。次の枠は映画化される前だからスタッフもキャストも示せないので「登 場 人 物」となっている。この詳細は次回確認することとする。
 さて「特別賞」とは何ぞや、だけれども、408~415頁「作品解説」、上下2段組で執筆者名はなく末尾(415頁下段14行め)に下寄せで(シナリオ編集部)とある。その冒頭、408頁上段1~5行めに、次のように説明されている。

 例年、シナリオ作家協会では、全会員の投票による集計を基に、/シナリオ賞を選出しているが、六八年度のシナリオ賞には本書に集/録された十本が選ばれた。掲載は封切順で順位はない。なお特別賞/は、同年度の公刊雑誌などに発表された未映画化シナリオの中から/同じ方法で選ばれたものである。


 1行空けて以下、順に収録作を解説している。(以下続稿)

*1:除籍になった訳ではなく、保存書庫に収められているようである。