瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

赤いマント(222)

 昨日の続きを上げようと思っていたのだけれども、もう少々確認すべきことが出て来たので後回しにする。遠からず続きを上げるつもりである、と云いながらそのままになってしまった記事が余りにも多いのだけれども。
・北川幸比古の学年(1)
 当ブログでは北川幸比古(1930.10.10~2004.12.25)の語る赤マント流言に度々触れて来ましたが、それは検索窓に「北川幸」とでも入れて検索してもらえばヒットする幾つかの記事を見ても承知されるように、松谷みよ子『現代民話考[第二期]II 学校〈笑いと怪談/子供たちの銃後・学童疎開・学徒動員〉に載った、戦前、東京市をパニックに陥れた赤マント流言に関する唯一の証言であったため、その後、赤マント流言の時期と内容について検討する際に一部では、この北川氏の談話が、ある意味、絶対的な典拠と位置付けられてしまったため、自然、言及する機会が多くなったのでした。
 しかしながら、これについては2013年10月24日付(003)に考証したように記憶違いもしくは計算違いがあるのです。この辺りのことは、近年ベストセラーになった朝里樹『日本現代怪異事典』がやはりこの計算違いを踏襲しておりましたので、2019年11月26日付(213)に改めて見解を纏めて置いたところですので、繰り返しません。
 問題の北川氏の談話ですが、静岡県在住の児童文学作家、望月正子(1938生)の報告となっています。そして『現代民話考[第二期]II 学校』の13~276頁「笑いと怪談」には(確か)この1話だけだったと思うのですが、先日、興味がないこともないけれども拾い読みする程度だった277~401頁「子どもたちの銃後*1」を眺めていて、ここに幾つか、望月正子報告の北川幸比古の談話が出ていることに気付いたのです。
 ちくま文庫『現代民話考[7] 学校・笑いと怪談・学童疎開では19~325頁「第一章 笑いと怪談」となっていて、単行本では「笑いと怪談」が23~224頁「第一章 怪 談」と225~276頁「第二章 笑 い」に分かれていたので、並べて検討する場合、少々どころでなくややこしい。文庫版では29~269頁「怪談」と270~325頁「笑い」には数字が与えられていなくて、327~471頁「第二章 子どもたちの銃後」。
 ですから、差し当たり「子どもたちの銃後」とだけしておきますが、その単行本287~327頁4行め・文庫版336~383頁「一、戦時下の学童・学生の話*2」に、以下の5話が採用されております。仮に番号を附して置きました。
【1】単行本291頁8行め~292頁8行め・文庫版342頁15行め~343頁「三 ホシガリマセン カツマデハ*3」の本文・分布の2話め、単行本291頁9~15行め・292頁8行め、文庫版342頁16行め~343頁6・15~16行目。
【2】単行本295頁12行め~298頁4行め・文庫版347頁9行め~350頁「五 旗をふり慰問袋をつくって*4」の分布の1話め、単行本296頁2~6行め・文庫版347頁15行め~348頁4行め。
【3】「五 旗をふり慰問袋をつくって」の分布の2話め、単行本296頁7~11行め・文庫版348頁5~9行め。
【4】単行本312頁14行め~315頁7行め・文庫版367頁10行め~370頁8行め「十五 戦時中の入試や転校*5」の本文・分布の3話め、単行本312頁15行め~313頁5行め、314頁8行め・文庫版367頁11行め~368頁2行め、369頁7~8行め。
【5】単行本317頁6行め~321頁・文庫版372頁12行め~377頁「十七 射たれる・焼かれる*6」の分布の3話め、単行本319頁2~9行め・文庫版374頁11行め~375頁2行め。
 それぞれ冒頭に時期を示しています。
【1】昭和十五年頃のこと。
【2】日支事変(昭和十二年)の頃、小学校二年生だった。
【3】昭和十三年、武漢三鎮占領の提灯行列を九段坂下まで父と見に行った。
【4】昭和十六、七年頃のこと。府立十三中(豊玉高校)を受験したが‥‥
【5】東京に敵機が最初に現れたのは国民学校六年生(昭和十七年)の時だった。
 既に2013年10月24日付(003)に示したように、昭和5年(1930)10月生の北川氏は何らかの事情のない限り昭和12年(1937)4月に小学校に入学しているはずで、卒業は昭和18年(1943)3月、すなわち【5】が正しく、【2】は小学校1年生のとき、そして【4】東京府立豊多摩中学校(現、東京都立豊多摩高等学校)入試は昭和18年だったはずなのです。――これらの報告は、恐らく赤マント流言に関するものも含めて元は1つの書面だったのが『現代民話考』編集に際し、分類されて分割されたのだと思いますが、しかし資料として使われる可能性を考えるとき、最低限の検証を加えて欲しかったと思うのです。いや、『現代民話考』編集サイドが間違った年を入れてしまった可能性もあろうかとも思われます。(以下続稿)

*1:5月19日追記】単行本のカバー及び本体の表紙・背表紙、扉は「子供たちの銃後」。目次及び本文は「子どもたちの銃後」。

*2:文庫版は読点がなく空白。

*3:文庫版には漢数字の番号がない。

*4:文庫版には漢数字の番号がない。

*5:文庫版には漢数字の番号がない。

*6:文庫版には漢数字の番号がない。