瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

いまに語りつぐ『日本民話集』伝説・現代民話(12)

 不思議な世界を考える会や民話と文学の会の会報など、実際に見ることが出来ないものについて、見られないなりに整理すると云う空しい作業をしていると、疲労感が一際募る。もうそろそろ「ヤングの知っているこわい話」を分担していた人たちも60代、70代になって、大学等の講義から離れる頃合いだろうから、今度はきちんと原資料と、それをどのように使い回したのか、自分たちで整理して後進のために公開して欲しい。かつ、同じ話を複数のシリーズに使い回したことについて、研究者として何らかの総括をしてもらいたいと思っているのである。
 だから、頼まれてもいない訳だし他に死ぬまでに片付けて置きたいことも多々あるので、そろそろ別の課題に乗り換えたいと思っているのだけれども、軽くない大活字の上製本を6冊、それから関連する書籍も若干、図書館から借りて来てやっているので、やはり返却期限までになるべく多くの作業を済ませて置きたい。そんな次第で今回も昨日の続きらしく、本シリーズと同じく「不思議な世界を考える会会報」を主要な情報源としており、編集担当者6人中5人が重なっている白水社版『日本の現代伝説』全4冊を典拠とするものを確認して置こう。
・「現代民話」の出典⑤~『日本の現代伝説』
 ⑪は「『魔女の伝言板―日本の現代伝説』近藤雅樹・高津美保子・常光徹・三原幸久・渡辺節子 白水社 一九九五」と編著者名を略さず掲出しているが、4冊全てから採っている⑬は、何故か「『ピアスの白い糸』(同前)」或いは「『魔女の伝言板』(同前)」と、「前」に出ていないのに編著者・版元・刊年を略したものしか出ていない。⑬⑭は編著者の1人めのみを挙げて他を省略している。こうなることは分かっていたのだから、編著者5人を全員並べたりせずに、もう少し智恵を働かせて何とか工夫して欲しかったと思うのである。いっそ「不思議な世界を考える会 編」で良かったのではないか。もし今後『日本の現代伝説』シリーズが文庫化されるような機会があれば、ここのところは改善して欲しいと切に願うものである*1
『ピアスの白い糸』
⑬二十・⑬八十六・⑬九十四・⑬九十六
『魔女の伝言板近藤雅樹他 白水社 一九九五
⑪十七・⑪二十・⑬九十一・⑬九十二・⑭二十六・⑭三十一・⑭三十七・⑭三十八・⑭五十三
『走るお婆さん』池田香代子・他 白水社 一九九六
⑬三十四・⑬五十六・⑬五十七・⑬八十九・⑭五十五・⑭五十六・⑭五十七・⑭六十一・⑭七十九
『幸福のEメール』岩倉千春・他 白水社 一九九九
⑬二十一・⑬三十二・⑬七十七・⑬七十八
 ⑩剣持弘子・⑫渡辺節子・⑮高津美保子は1例も採っていない。
 ⑪岩倉千春は2例、⑬大島広志は14例、⑭常光徹は10例採っている。
 『日本の現代伝説』は7月4日付「閉じ込められた女子学生(22)」に引用したように、学術的な使用にも耐えうるような、典拠の本文に手を入れない方針で編集されている。本シリーズも7月5日付「閉じ込められた女子学生(23)」に引いたように、同様の方針で編集されている。だから『日本の現代伝説』を典拠として使用するのは悪くない。しかし『日本の現代伝説』は「不思議な世界を考える会会報」にその多くを負っているらしく、新規報告を集めたものと云うより、同人誌的な「不思議な世界を考える会会報」にて報告済みの事例を編集し直したものと云う印象を受ける。私としては「不思議な世界を考える会会報」を挙げられても参照出来ないのだから『日本の現代伝説』を挙げてもらった方が有難いくらいだが、大元は「不思議な世界を考える会会報」なのだから、『日本の現代伝説』を出典としないのは正しい措置だとは言える。
 ところで、その『日本の現代伝説』の出典だが、巻末の「主要引用文献」にその全体としての出典をつらつら列挙するばかりで、個々の話ごとの出典を明記していないのである。いつ、誰が記録したかは、一々注記してあるから、「不思議な世界を考える会会報」を閲覧出来ない私としては、注記の記述にある状況証拠(?)によって、同定するしかない。――渡辺氏は不思議な世界を考える会の主宰らしく全て「不思議な世界を考える会会報」に遡ることが出来たが、他の3名は(特に男性2人は)一部探しあぐねて、引用を載せている『日本の現代伝説』までで済ませてしまったらしく、思われるのである。‥‥違うかも知れないが。
 とにかく大元の「不思議な世界を考える会会報」と、こういった再録・再話などとの関係を、当事者の方でしっかり分かる形で整理して、死ぬまでに(!)提示して欲しいと思うのである。今後の研究から無用な手間を省くためにも、見落としを防ぐためにも。(以下続稿)

*1:7月26日追記】このシリーズの編著者列挙の弊害(?)については、2018年8月18日付「「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(035)」に述べたことがある。