瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

柴田隆行『片倉の自然』(5)

 一旦切り上げるに際し、幾つか気になったところをメモして置こう。
・①48頁5行め③48頁1行め「宮沢賢二」は「宮沢賢治」。
・①50頁11~12行め③50頁7~8行め「‥‥思い返した(ただ残念なことに、この雑木林も近日|中に私立高校/建設の為*1、姿を消すそうだ)。」
 ここは③でもほぼそのままになっている。その後、加住丘陵に私立高校は建設されたのだろうか。
・①65頁9行め「‥‥あったらしい。」の下、15字分空白だが改行した10行めは字下げせずに「畳表にするイグサがあるが、それによく似ていて、‥‥」と始まる。③64頁5~6行めは「‥‥あったらしい。|畳表にするイグサを御存知だろうか。それによく似ていて、‥‥」と、空白などなく自然に続けている。
・①98頁5行め~99頁13行め、石牟礼道子苦海浄土』の第三章「ゆき女きき書」の1節め「五月」からの引用がある。①刊行より前の版から引きたかったのだが、年末に借りた本を返しに行った隣の市の図書館で借りた、講談社文庫『新装版 苦海浄土 わが水俣病(2004年7月15日第1刷発行・定価667円・413頁)によって示すと140~168頁「五月」の終り近く、167頁5行め~168頁10行めである*2。異同(つまり写し間違い・校正漏れ)を示す必要はなかろう。③はこの長い引用をなくして、次のように纏めている。
 ③95頁4~9行め、

‥‥。|かつて日本で具体的にどのような生活が、自然に溶け込んで営まれて来たかというこ|とについては、最近のめざましい民俗学の成果によって明らかだ。
 だがまた、日本人は自然と調和した文化を持ち、自然の中に身を溶かして生活して|きたというのは必ずしも事実とは言えないという意見もある。この考えは、先の近代|科学と自然保護とは矛盾しないという考えと関わりを持つ。
 たしかに日本人は万葉集以来多く自然をテーマにした歌や文章を書いて来た。‥‥


 ①の『苦海浄土』引用前を抜いて置こう。98頁2~4行め、

‥‥。かつて日本で具体/的にどのような生活が、自然に溶け込んで、営まれて来たかを、民俗学的資料は別とし/て、ここでは石牟礼道子さんの『苦海浄土』から一節引用して示してみたい。


 引用後を抜いて置こう。①100頁1~4行め、

 さて次に、日本人は自然と調和し、自然の中に溶け込んで生活してきたというのは、/必ずしも事実とは言えないということについて。そしてこのことは、先の、近代科学と/自然保護とは矛盾しないということと関わりを持つ。
 確かに、日本人は万葉集以来、多く自然をテーマにした歌や文章を書いて来た。‥‥


 「読書案内」は丸数字を使っているので①は【読書案内】、③は「読書案内」とする。
 【読書案内】は㊺点、「一、読物・ガイドブック」①~⑳、「二、図  鑑」㉑~㉝、「三、絵  本」㉞~㊶「四、写 真 集」㊷~㊺で、標題・著者・版元もしくあはレーベル、冊数を挙げる。その前に「一、片倉周辺の自然を知るためには」として「イ、文学的」3点「ロ、地域的」5点、「ハ、野鳥」5点、「ニ、植物」11点、「ホ、その他」4点を丸数字で挙げる。続いて「二、自然観察をしたい人」3点、「三、子供たちのために」は「イ、図鑑」4点「ロ、絵本」7点、「四、人と自然との関わりについて」10点、「五、写 真 集」4点と、115頁5~6行め「(*参考文献はほかにもたくさんありますが、自分で使ってみて、あるいは読んで、良/いと思ったものだけ載せました)。」との断り書きがある。
 「読書案内」には前置きはなく「一、読物・ガイドブック」①~⑱、「二、図 鑑」⑲~㉚、「三、写真集」㉛~㉟、「四、絵 本」㊱~㊴と列挙し1行分空けて最後、113頁6~7行め「* ほかにも良い本はたくさんあります。ここでは自分で使ってみたり読んだりし|て良いと思ったものの一部を載せました。いずれも現在入手できます。」との断り書き。
 【読書案内】にあって「読書案内」ではなくなっているものは、116頁4行め「⑨ 新季節の手帖 自然保護と自然観察研究会」6行め「⑪ 照葉樹林文化 上山春平編 中公新書」8行め「⑬ 多摩川の自然を守る 横山理子 三省堂新書」9行め「⑭ 人間周期律 山崎圭 現代企画社」11行め「⑯ アメリカの動物滅亡史 藤原英司 朝日選書」117頁2行め「⑳ 苦海浄土 石牟礼道子 講談社文庫」12行め「㉘ 野山の木 堀田満 保育社カラー自然ガイド 全二冊」118頁2行め「㉚ 木の実・草の実 室井・巽 保育社カラーブックス」4行め「㉜ 日本の動物 増井光子 自然観察と生態シリーズ10 小学館」8行め「㉟ かもさんおとおり マックロスキー 福音館」10行め「㊲ 木のうた イエラ・マリ ほるぷ出版」12行め「㊴ もりのむしとのはらのむし こどものとも 福音館」119頁1行め「㊵ たんぽぽみつけた かがくのとも 福音館」2行め「㊶ くさやきのうた こどものとも 福音館」。
 「読書案内」で追加されているのは109頁11行め「⑤ 多摩の草木記 菱山忠三郎 武蔵野郷土史刊行会」110頁3行め「⑦ 流域紀行八王子 馬場喜信 かたくら書店」7行め「⑩ 日野の昆虫ガイドブック 日野市」9行め「⑫ 多摩川の自然 多摩川の自然を守る会」112頁11行め「㉟ 山の仲間たち 細田倖市 講談社」113頁5行め「㊴ 野の草花 古矢・高森 かがくのほん 福音館」。
 石牟礼道子苦海浄土』を記述ごと省いたのは、否定的な評価に転じたからであろう。
 横山理子『多摩川の自然を守る』は、1月19日付(3)に見たように柴田氏が多摩川の自然を守る活動に転ずる切っ掛けになった本なのだが「読書案内」にはない。「現在入手でき」なくなったために省かれたのであろうか。【読書案内】にあって「読書案内」にない本には、この条件に引っ掛かって削られたものがあるかも知れない。
 ①65頁5行め③64頁1行め「前川文夫氏の『日本人と食物』(岩波新書)」のように本文中に言及されていて、【読書案内】と「読書案内」とも、取り上げられていない本もある。
 なお、かたくら書店が本書に先立って刊行した馬場喜信『八王子片倉台の地誌』も【読書案内】には115頁13行めに「⑤ 八王子片倉台の地誌 馬場喜信 かたくら書店」と見え、「読書案内」には110頁2行め「⑥ 八王子片倉台の地誌 馬場喜信 かたくら書店」とあってこちらでは3行めの⑦とともに4行めに「 自分の足で歩き目で見 書いた好ガイド」とのコメントが付されている。「読書案内」の109~111頁には何冊かまとめて【読書案内】にはなかったコメントが附されている。
 ついでに本文中から『八王子片倉台の地誌』に触れたところを拾って置こう。
・①17頁7~8行め③17頁10~11行め「‥‥。片倉にもコブシの木は多く、東急片倉台の42街区西のコブシの木と稲荷の|小祠に/ついては馬場さんの『八王子片倉台の地誌』でも紹介されている。」
・①③21頁9行め「 片倉という地名は、馬場さんの本によると、‥‥」
・①86頁3~4行め③84頁2~3行め「‥‥。片倉から眺められる山々については|馬/場さんが『八王子片倉台の地誌』の折込付録の中で図示しているので、‥‥」
 それから、柴田氏は道了堂のある大塚山に独自の呼称を与えている。これもついでに拾って置いた。
・①③44頁3行め「 16号バイパス予定地、特に道了山の電波塔下の芝の生えた斜面は、‥‥」
・①48頁1行め③47頁10行め「 キョキョキョキョキョ、と突然奇怪な声が道了山の方から闇を破って聞こえて来る。/|‥‥」
 次回は本書の続刊されなかった「つづき」について取り上げることとしたい。(以下続稿)

*1:③「ため」。

*2:2月9日追記】柴田氏が参照した新装版になる前の『苦海浄土』を見た。

講談社文庫『苦海浄土 わが水俣病(昭和47年12月15日第1刷発行・昭和62年5月11日第29刷発行・定価380円・330頁)142頁9行め~143頁10行め。ついでに新装版の書影も示して置こう。