昨日の続きで、①上製本(初版)第一刷の、4章めを見て行くこととする。要領は10月17日付(05)に同じ。
207頁(頁付なし)中央上部に大きく「諏訪湖・伊那谷」。208頁(頁付なし)は左下に「諏 訪 郡 諏 訪 市 岡 谷 市 上伊那郡/下伊那郡 駒ヶ根市 飯 田 市 伊 那 市」。
【38】百田ばなし〔下伊那郡〕209~213頁(挿絵209頁上「ゆ」)
採 集 牧内武司
【39】信濃には神無月がない〔諏訪郡〕214~215頁
はなし 諏訪郡ちの町金沢支所 野口きし
【40】ねずみの御殿〔下伊那郡〕216~220頁(挿絵216頁上)
採 集 伊那民俗研究会 岩崎清美
【41】まま子と苺の実〔下伊那郡〕221~228頁(挿絵221頁上「ゆ」)
採 集 下伊那郡龍江村天龍峡 牧内武司
【42】咲く花と木の葉〔下伊那郡〕229~232頁(挿絵229頁上「比呂也」)
採 集 伊那民俗研究会 岩崎清美
【43】ズイトン坊さまのはなし〔下伊那郡〕233~235頁(挿絵233頁上「比呂也」)
採 集 伊那民俗研究会 岩崎清美
【44】早太郎犬と人身御供〔上伊那郡〕236~242頁(挿絵236頁上)
採 集 杉村顕
【45】石の正兵衛さん〔下伊那郡〕243~247頁(挿絵243頁上)
採 集 伊那民俗研究会 岩崎清美
【46】大男・尾科文吾の話*1〔下伊那郡〕248~252頁(挿絵248頁上)
はなし 伊那民俗研究会 岩崎清美
再 話 瀬川拓男
【47】わらべうた 253~258頁
凧あげ唄(諏訪郡)
お月さまいくつ(諏訪郡)
てまり唄(諏訪郡)
有賀恭一著「諏訪の民謡」より
(諏訪郡)
採 集 竹沢直義
(下伊那郡)
遊び唄
鬼ごっこの唄(上伊那郡西箕輪)
上伊那郡誌編纂会「上伊那のわらべ唄」より
となえ唄 (ことば) (下伊那郡)
牧内武司「下伊那の民謡」より
子守唄(諏訪郡)
有賀恭一著「諏訪の民謡」より
伊那民俗研究会の岩崎清美(1884~1944)の「採 集」した下伊那郡の話が半ばを占めるが【46】のみ「はなし」となっている。しかしながら「はしがき」に「すでに故人となられた‥‥諸先輩」の1人として挙がっていたのだから「はなし」を聞いたかのように書くのはおかしい。
岩崎氏の著書はその多くが国立国会図書館デジタルコレクションにて閲覧出来る。
・伊那民俗研究會 編『伊那民俗叢書 第二輯 昔ばなし』昭和九年六月五日印刷・昭和九年六月拾日發行・定價金八拾錢・信濃郷土出版社・一五一頁
發行所は「信濃郷土出版社」だが發行者は「山村正夫」で9月10日付「白馬岳の雪女(43)」に見たように發賣所の「山村書院」の代表である。著作者は「伊那民俗研究会」で「岩崎清美」は「右代表者」となっている。なお奥付の裏から1頁1点の3頁分「發行所〈長野縣飯田傳馬町/振替長野六二〇八番〉山村書院」の広告がある。2点めが『伊那民俗叢書』第一輯だが、この『山の祭り』は確かに山村書院版なのである。
前付(頁付なし)が12頁分ある。
【40】 「一一 鼠の御殿」一九頁9行め~二一頁5行め
【42】=「七六 木の葉と咲く花の話」一一四~一一六頁2行め
【43】=「一七 山寺の坊樣ズイトンの話」三〇頁4行め~三一頁9行め
【45】=「六八 石の正兵衛」一〇三~一〇六頁1行め
「再 話 松谷みよ子」の4話は全てこの『昔ばなし』に求められるようである。但し【40】については同題の話を大幅に引き伸ばしており、題が同じでなければ原話だとは思えないくらいになっている。それから岩崎氏が採集したようになっているが、前付の扉に続いて2頁ある岩崎清美「序」には、1頁め7行め「此の中に私の採録した分のものは」とあって岩崎氏が記録した分も少なくないらしいが、冒頭2行め「此の本に載せた話は、會員の中の幾人かの人達から得たもので、‥‥」とあるから岩崎氏が「採集」したものに限らないようである。但し収録される一〇〇話には、採録者や伝承地などの情報が一切附されていない。
なお、瀬川拓男が再話した【46】は、岩崎清美 編『傳説の下伊那』(大正十二年七月十五日印刷・大正十二年七月二十日發行・定價金壹圓參拾錢・文星堂書店・一八二頁)一二五~一三〇頁「巨人及其の他の話」の1話め、一二五頁2行め~一二九頁10行め「尾科文吾」に拠っているらしい。後に岩崎清美著『伊那の傳説』(昭和八年七月十五日印刷・昭和八年七月二十日發行・定價壹圓八拾錢・山村書院・三二六頁・四六判上製本)にもこの人物を取り上げているが、二五五頁2行め~二五九頁「尾科豐後」と題が違っている。(以下続稿)
*1:ルビ「お しな」。