瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

小説の背景

山本禾太郎「東太郎の日記」(10)

前回の【追記】について片付けて置きましょう*1。 山本禾太郎について調べ始めてまだ1ヶ月半なのでまだ見ていない文献ばかりで、今は見る傍からメモを取っているのですけれども、昨日、仕事の帰りに返却期限で立ち寄った図書館で、Amazonレビューに山本氏に…

山本禾太郎「東太郎の日記」(09)

・「週刊朝日」の「新大衆文藝『事實小説』募集」(5) 前回、住所をそのまま載せましたが、82年前の懸賞小説で関係者も死に絶えているでしょうし、遺族がそのまま在住していても住所表示も変わっているであろうと思ってのことです。分かる人には分かる(か…

山本禾太郎「東太郎の日記」(08)

・「週刊朝日」の「新大衆文藝『事實小説』募集」(4) 次に当選発表の号を見てみましょう。 ・週刊朝日新年特別號(第二十五卷/第 一 號)昭和九年一月一日發行・朝日新聞社・224頁・B5判並製本 この号も製本されているものを見たので、号数や発行日は目…

山本禾太郎「東太郎の日記」(07)

・「週刊朝日」の「新大衆文藝『事實小説』募集」(3) 10月12日付(05)の続き。 日を改めて仕事帰りに再びその施設を訪れ、やはり書庫請求の機会は1度しか許されないくらいの時間しかありませんでしたが、もう何を見るべきかは分かっています。昭和8年(1…

山本禾太郎「東太郎の日記」(06)

さてここで、10月7日付(02)の前置きで予告した、論創ミステリ叢書『山本禾太郎探偵小説傑作選』編集時に「東太郎の日記」を見付けられなかった理由の見当を、述べておきましょう。 ・九鬼紫郎『探偵小説百科』 探偵小説百科 (1975年)作者: 九鬼紫郎出版社/…

山本禾太郎「東太郎の日記」(05)

・「週刊朝日」の「新大衆文藝『事實小説』募集」(2) 昨日の続き。 しかしながら、昭和八年一月の「週刊朝日」新年特別號の「當選發表」を見ても「東太郎日記」らしき作品は見当たらないのです。誌上に掲載された当選作を見てもやはり浪曲界の内幕物では…

山本禾太郎「東太郎の日記」(04)

・「週刊朝日」の「新大衆文藝『事實小説』募集」(1) この企画は、10月7日付(02)に引いた山下氏の指摘する当時の風潮の中から発想されたものでしょう。 それでは、募集の出た号について眺めて置きましょう。 ・週刊朝日創刊十周年特別記念號(第二十二…

山本禾太郎「東太郎の日記」(03)

10月7日付(02)の続き。 ネットではヒットしないし検索も出来ない、館内限定の端末検索で「週刊朝日」の記事を検索したところ、見当通り「新大衆文藝事実小説」の懸賞が昭和7年(1932)にあったことが分かりました。そこで、その募集記事の掲載されている号…

山本禾太郎「東太郎の日記」(2)

本稿も先月末から準備していました。この小説を探索するに当たっての見当の付け方について述べています。但し(1)と違って完成稿になっていなかったので今回投稿に際して大幅に手を入れました。 その後、従来、本作を上手く探し出せなかった理由も分かって…

山本禾太郎「東太郎の日記」(1)

本稿は当初「山本禾太郎「東太郎日記」(1)」という題で9月27日から29日に準備しました。山下武『探偵小説の饗宴』の記述を手掛かりに、どこに行けば探索・閲覧・複写が出来るか、大体の見当が付きましたので、その後、今週、仕事の帰りにその施設に2度、…

田中英光『オリムポスの果實』(05)

・モデル探索の探索〜「オリンポスの果実」① 何らかの事実に基づいていると思しき小説を読むと、事実は小説そのままではないのだろうが、事実そのままでない分だけ、実際はどうだったんだろう、という興味が自然に湧いてくる。 そこに、小説のモデルの詮索、…

『加賀乙彦 自伝』(1)

・加賀乙彦『加賀乙彦 自伝』2013年3月10日第1刷発行・定価2000円・293頁・四六判上製本加賀乙彦 自伝作者: 加賀乙彦出版社/メーカー: ホーム社発売日: 2013/03/05メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 版元はカバー裏表紙に「発行/ホーム社 …

北杜夫『楡家の人びと』(09)

この叔母の役割であるが、さらに後の平成18年(2006)1月に「日本経済新聞」に連載された「私の履歴書」を中心に纏めた『どくとるマンボウ回想記』(日本経済新聞出版社)には、より明確に記述されている。 ・単行本(二〇〇七年一月二十四日第一刷・定価150…

北杜夫『楡家の人びと』(08)

7月13日付(07)の続きで、「北杜夫全集月報 6」に載る「創作余話(6)」の冒頭部を引いてみよう。1頁上段3〜8行め、 「楡家の人びと」は「幽霊」と共に、私の純文学長篇/の中で自分自身で許せる物と信じているものだ。 この作品の成立過程は、もとよりト…

中島京子『小さいおうち』(41)

・瑣事少々(1) 一番問題だと思うところを書くと言いつつ、しばらくそうでないところばかり書いて来た。 まだちょこちょこと気になるところがあるので、肝腎なところを済ませてしまうと、詰まらない、別にそこがどうかしたところで大勢に影響を及ぼさない…

中島京子『小さいおうち』(40)

・引用の用字・仮名遣い(2) 最終章はタキの妹の孫・健史の視点から書かれているが、登場人物の健史が書いたのではないことは、7月2日付(29)までくどくどと説明を試みた通りである。 しかし引用の用字はタキのノートに準じているらしく、最終章4の冒頭…

中島京子『小さいおうち』(38)

著者の中島氏は2013年12月21日付「赤いマント(61)」に紹介した「楽天ブックス 著者インタビュー」の2010年8月5日「中島京子さん」に、「どんな資料を主に探されたのでしょう?」と問われて、 中島さん 構想を練り始めてから執筆にかかるまでに約2年ありま…

北杜夫『楡家の人びと』(07)

昨日の続きで『北杜夫全集』の月報に連載された「創作余話」を見て置こう。 ・北杜夫全集4『楡家の人びと』一九七七年二月二五日発行・一九八三年八月三〇日三刷・定価一三〇〇円・新潮社・582頁・四六判上製本。 「北杜夫全集月報 6」(昭和52年2月・新潮…

北杜夫『楡家の人びと』(06)

北杜夫(1927.5.1〜2011.10.24)は『楡家の人びと』執筆の準備について、たびたび述べている。私は北氏の著作を殆ど読んでいないので、まだ他にもあるかも知れないが、最晩年のエッセイ集から拾って見ることにする。 ・北杜夫『マンボウ 最後の大バクチ』新…

松本清張『潜在光景』(4)

・松本清張短編全集10(光文社) カッパ・ノベルス『空白の意匠』1965年1月15日初版1刷発行・2003年4月20日3版1刷発行・定価848円・298頁空白の意匠 ―松本清張短編全集〈10〉 (カッパ・ブックス)作者: 松本清張出版社/メーカー: 光文社発売日: 2003/04/18メ…

最近の『舞姫』関連本(01)

2011年6月16日執筆。もう少し、続きが書ける程度に準備してから上げようと思っていたら、続きは一向に書けないまま、今になってしまった。2012年12月12日付に「鴎外」誌を取り上げたのは、下に書いたような事情で、「鴎外」を所蔵している図書館に立ち寄った…