瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

小説の背景

山本禾太郎「第四の椅子」(22)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(22) いよいよ最後に山本氏が米島清の筆名で応募した「第四の椅子」の選評を眺めて置きましょう。 白井喬二の選評(50点・5位) ―米島清氏の「第四/の椅子」は、一種の靈感奇話/とでもいふのであらうが…

山本禾太郎「第四の椅子」(21)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(21) それでは二等当選の作品について見て置きましょう。 ・關田一喜「河豚クラブ」 白井喬二の選評(80点・1位) ―關田一喜氏の「河/豚クラブ」は令孃の家出事件/を中心とした、私立探偵家の活躍/であ…

山本禾太郎「第四の椅子」(20)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(20) 勝見かく路というのも筆名でしょうけれども、この人についても東三條氏と同様、家に座してネット検索している分には、何の手懸りも得られませんでした。 ・勝見かく路「めぐる仲仙道」 白井喬二の選評…

山本禾太郎「第四の椅子」(19)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(19) 東三條利公というのは11月23日付(07)に引いた、昭和3年10月20日付の「大衆文藝/ 豫選結果」に示されている住所「京都市下京區三條大橋東六丁目分木町六四徳田方」による筆名でしょう。これ以外に懸…

山本禾太郎「第四の椅子」(18)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(18) 長濱勉については「直木賞のすべて」の川口則弘(1972生)のサブサイト「文学賞の世界」に拠ると、「サンデー毎日」大衆文藝の第4回の、甲種(100枚)選外佳作5作のうちに「痴人の剣」が入り(当選は2…

山本禾太郎「第四の椅子」(17)

昨日の記事12月3日付(16)に関連して、12月2日付(15)に岡戸武平『全力投球』に讀賣新聞の懸賞の記述があるとのコメントを頂きました。しかしながら、それをこの目で確かめるのはなかなかに困難らしいので、……いつのことになりましょうか。出来れば岡戸氏…

山本禾太郎「第四の椅子」(16)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(16) 次に、時代小説としては2番めに高い評価を得たものの惜しくも次点に終わった岡戸武市「不戰時代」の選評を見て置きましょう。 既に11月27日付(11)の12月1日付追記に述べたように、昭和3年10月20日付…

山本禾太郎「第四の椅子」(15)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(15) それでは作品毎に選評を紹介して行きたいのですが、点数順に評価の高いものから挙げるか、低いものから挙げるか、或いはジャンル別に――時代小説が6作品と、探偵小説が2作品ということになるようです――…

山本禾太郎「第四の椅子」(14)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(14) 昨日の続きで、吉川英治の選評の、総評部分を見て置きましょう。省略せずに全文を引きます。 豫選原稿八篇、前日の朝から徹/宵翌日まで期待と興味をもつて一/氣に通讀した。 作家は多くありながら現…

山本禾太郎「第四の椅子」(13)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(13) それでは選評を見て行きたいのですが、見出しに続いて掲載される、長命であった白井氏の選評は全文を抜く訳に行きませんので、冒頭の総評に当たる部分は、ざっと紹介するに止めます。 白井氏は「殆ど…

山本禾太郎「第四の椅子」(12)

昨日は一昨日の続稿を上げるつもりで準備していたのだが、途中で全て消えてしまった。材料は揃えてあっても入力と校正を何日分か済ませて置くような余裕はないので、日課だから何とか続けているのである。――そんなに余裕がないのなら連続テレビ小説の批判な…

山本禾太郎「第四の椅子」(11)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(11) それでは11月25日付(09)に紹介した昭和3年(1928)12月11日付の発表記事にあった「別掲文藝欄における採點成績及び批評」を眺めて置きましょう。 (四)「文藝」面、まず右上に3段抜きで「文 藝」と…

山本禾太郎「第四の椅子」(10)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(10) 11月22日付(6)に紹介した昭和3年(1928)10月20日の社告では長篇小説も大衆文藝も12月10日に当選発表されるはずでした。ところが、12月11日に発表されたのは大衆文藝のみで、長篇小説の発表は翌年…

山本禾太郎「第四の椅子」(09)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(9) 昭和3年(1928)10月20日の社告では12月10日と予告されていましたが11日に入選作の発表がありました。 昭和三年十二月十一日(土曜日)付「讀賣新聞」第一萬八千六百二號(市内版)*1の(二)面、12段…

山本禾太郎「第四の椅子」(08)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(8) 一昨日からの続きで、昭和3年(1928)10月20日の「記念懸賞募集作品の/第一次豫選を終る」の最後、6段めの残りの、1字下げで振仮名なしで行間が詰まっている箇所、[概評]を見て置きましょう。 最初の…

山本禾太郎「第四の椅子」(7)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(7) 昨日の続きで、昭和三年十月二十日(土曜日)付「讀賣新聞」第一萬八千五百五十號の(四)「文藝」面の「記念懸賞募集作品の/第一次豫選を終る」の続き、5段めから抜いて置きましょう。まず「[大衆文…

山本禾太郎「第四の椅子」(6)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(6) 前回見た昭和3年(1928)9月23日の社告に予告された通り、10月20日に入選作の発表がありました。 昭和三年十月二十日(土曜日)付「讀賣新聞」第一萬八千五百五十號*1の(四)「文藝」面、3〜6段めの…

山本禾太郎「第四の椅子」(5)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(5) さて、前回紹介した締切直後の記事には「七八の両月」を「社内予選」に当て「九月上旬」に「予選合格」作品を「発表」、そして「九、十の両月間」に「予選パッス者」が送付済みの20回分に加えて梗概だ…

山本禾太郎「第四の椅子」(4)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(4) 昨日の続きで、締切の後に出た記事を眺めて置きましょう。 昭和三年七月四日(水曜日)付「讀賣新聞」第一万八千四百四十二號(市内版)*1の(七)面*2、12段組で記事は10段めまで、11〜12段めは「油…

山本禾太郎「第四の椅子」(3)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(3) この懸賞ですが、昭和三年一月三十日(月曜日)付「讀賣新聞」第一萬八千二百八十六號(市内版)*1の(二)面*2、12段組の7〜10段め中央から左に4段抜きの囲みで、上部に「念記年周五十五第立創社本」…

山本禾太郎「第四の椅子」(2)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(2) この件については、戦後の回想もあります。 論創ミステリ叢書15『山本禾太郎探偵小説選Ⅱ』361〜366頁「探偵小説思い出話」です。 ここでも「讀賣新聞」の懸賞は「窓」の選考と絡めて記述されています…

山本禾太郎「第四の椅子」(1)

・讀賣新聞社「本社五十五周年記念懸賞大衆文藝」(1) 10月6日付「山本禾太郎「東太郎の日記」(1)」に予告した「『読売新聞』の長編懸賞」について確認して行きましょう。 既に触れたように論創ミステリ叢書15『山本禾太郎探偵小説選Ⅱ』所収「あの頃」…

山本禾太郎「東太郎の日記」(33)山本桃村⑦

山本氏はこの時期のことを、本作以前に随筆に書いたことはありました。 その1つが、論創ミステリ叢書14『山本禾太郎探偵小説選Ⅰ』の「評論・随筆篇」339〜343頁に収録される随筆「ざんげの塔」です。横井司「解題」387頁1〜2行めには、 「ざんげの塔」は、『探…

山本禾太郎「東太郎の日記」(32)山本桃村⑥

未だ梅中軒鶯童『浪曲旅芸人』を精読する余裕がないのですが、この後で山本桃村の名が出て来るのは11月4日付(27)に引いた、大正8年(1919)の「満洲の日記」の、書体についての記述のみのようです。すなわち昨日までに引いた、大正6年(1917)1月頃に京山…

山本禾太郎「東太郎の日記」(31)山本桃村⑤

・梅中軒鶯童『浪曲旅芸人』(5) 11月6日付(29)で見た、大正6年(1917)2月3日に岡山県の津山で旗揚げした一座がどうなったか見て置きましょう。96頁上段4〜17行め、 当時の津山駅は現在の津山口で、町まではかなりの距離が/ある。町中へ入って、あちこ…

山本禾太郎「東太郎の日記」(30)山本桃村④

・梅中軒鶯童『浪曲旅芸人』(4) 前回、支配人と副支配人(手代)について本作と照合して、そこまでになってしまいましたが、いよいよ「秘書として小円師に書道を教えていた山本桃村」について検討して行きましょう。 まずは『浪曲旅芸人』で、京山小圓を…

山本禾太郎「東太郎の日記」(29)山本桃村③

・梅中軒鶯童『浪曲旅芸人』(3) それでは、大正6年(1917)に梅中軒鶯童と一座していた「事務の山本桃村君」が、本作の山木東太郎、すなわち本名山本種太郎の探偵小説作家山本禾太郎である根拠を示しましょう。 前回の引用の続き、95頁下段5〜16行めを抜…

山本禾太郎「東太郎の日記」(28)山本桃村②

・梅中軒鶯童『浪曲旅芸人』(2) 「山本桃村」が登場する章は、86頁上段12行めからの「(一〇) 放 浪」です。順を追って書かれているのですが、はっきり年月が書かれていないところもあるので、この章の頭から、2013年10月26日付「赤いマント(5)」と同じ…

山本禾太郎「東太郎の日記」(27)山本桃村①

・梅中軒鶯童『浪曲旅芸人』(1) この自伝は恐るべき記憶力によって克明に綴られています。しかし全く書いたものがなかったのかというと、書いたものはあったのです。122頁上段6行め〜131頁下段4行め「(十二) 満鮮の初巡業」の章、126頁下段13行め〜127頁…

山本禾太郎「東太郎の日記」(26)

私は感情移入を強いられる藝能が苦手なので、落語はよく聞くけれども人情噺は好きではないのです。浄瑠璃や浪花節も必要があって聞く程度です。 そんな訳で、浪花節に関する本も読んだことがなかったのですが、先月からぼちぼち、参考になりそうな本を借りて…