瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

白馬岳の雪女(04)

7月22日付(03)の続き。 私は、所謂「蓮華温泉の怪話」は青木純二が岡本綺堂「木曾の旅人」に想を得て捏造したものと考えているが、そのついでに、所謂検算みたいな按配で、類例である白馬岳の雪女についても検討して見ようと思ったのである*1。そこで「蓮…

新聞解約の辯(2)

6月12日付(1)に述べたように、今月から新聞を解約したので、狂気のイヴェントに関する情報を殆ど見ずに過ごしている。本当に解約して良かった。 全く予想通りに推移している。奇怪なのは、政府やその関係者が全くの楽観論で、この程度の予測も出来なかっ…

山田野理夫『アルプスの民話』(7)

・山田野理夫『怪談の世界』昭和53年7月20日 第1刷発行・定価1200円・時事通信社・243頁・四六判上製本 この本にも『アルプスの民話』が利用されている。但し前回見た『山と湖の民話』と違って、243頁「主要参考文献」に明示されている。すなわち、29点列…

山田野理夫『アルプスの民話』(6)

・山田野理夫『山と湖の民話』昭和四八年三月一五日 第一版発行・定価六八〇円・星光社・269頁・B6判上製本 星光社から刊行された山田氏の『民話シリーズ』全五巻の2巻め。潮文社から刊行した『アルプスの民話』『海と湖の民話』の2冊が成功したことにより、…

山田野理夫『アルプスの民話』(5)

昨日は前回分を途中で投稿することになってしまった。2019年10月に礎稿を作成した際にざっと「目次」を眺めて見当を付けて置いたのだけれども、改めて対照させてみると題名からは察しの付かなかったものが多々あり、他にも前半或いは後半に『山の傳説』に由…

山田野理夫『アルプスの民話』(4)

昨日の続き。 「目 次」7頁3行め「雪 お ん な」を「六四」とするが66頁からである。 11頁(頁付なし)長野県の略地図があって、郡の境界線と河川、山と主要都市を示す。しかし中央アルプスの山が全く記入されていない。 以下、各話に仮に番号を附し、末尾に…

山田野理夫『アルプスの民話』(3)

それでは、内容について①上製本に拠りつつ見て置こう。 ・「はしがき」 1~4頁「は し が き」の1段落め、1頁2~9行め わたしが山へ惹かれたのは蔵王山からです。暮しのため仙台を去り、東京に棲むように/なってからは日本アルプスの山々です。山里で民話の…

山田野理夫『アルプスの民話』(2)

昨日の記事、諸版については③1965年版と⑥1976年版を追補した。番号もずらしたが過疎ブログのこと故(笑)影響はないであろう。 それはともかくとして、私が見た①上製本と⑤潮文社新書新装版の内容について見て置こう。但し手許にあるのは①のみで、⑤はこの1年…

山田野理夫『アルプスの民話』(1)

私が見たのは①上製本と⑤潮文社新書新装版で、2019年9月中旬に借りて比較し、10月11日に当記事の礎稿を作った。新書新装版は第1回の緊急事態のときにも借りていたのだが、そのときには他の資料が揃えられなかったので記事を仕上げられなかった。その後も借り…

白馬岳の雪女(03)

さて、国文学者の星野五彦が昭和57年(1982)と云う早い時期に、白馬岳の雪女を取り上げていた、と昨日書いたけれども、これには若干註釈が必要である。 星野氏の「綺堂と八雲――伝説と創作を通して――」の趣旨については、2013年7月2日付「「木曾の旅人」と「…

白馬岳の雪女(02)

この問題に関しては、遠田氏もしくは牧野氏の論文を辿りながら確認して行くのが良さそうだけれども、その前に幾つか、手許にある資料を片付けて置こう。 さて、昨日「「雪女」にそっくりな話が、白馬岳にも伝わっている(?)ことは、昭和50年代から問題にな…

白馬岳の雪女(01)

しばらく遠ざかっているうちに色々と忘れてしまった。――女子高の講師をしていたときには生徒の顔と名前を大体すぐに覚えてしまったのに、その後、花粉症を発症して、そのせいか鼻中隔彎曲症の影響も顕在化してからは、人の顔と名前が覚えられなくなった。そ…

芥川龍之介「尾生の信」(12)

さて、7月14日付(11)までの『荘子』に続いて『戦国策』『史記』『淮南子』を見て、それから「微生高」について確認するつもりだったのだけれども、借りていた本を返却してしまって、今、こういう時世なので続けて借りることが出来ない。前回の緊急事態(何…

上田満男『わたしの北海道』(2)

昨日の続き。 続いて「第二部 開拓の歴史」の細目を見て行くつもりだったが、それは秋以降、余裕があるときに果たすこととしたい。 さて、本書に関しては、ネット上には古書店の在庫状況くらいしか情報がない。元の連載についても、何せ北海道版の、40年以上…

上田満男『わたしの北海道』(1)

・すずさわ叢書14『わたしの北海道―アイヌ・開拓史』1977年7月25日発行・定価1,200円・すずさわ書店・318頁・四六判並製本わたしの北海道―アイヌ・開拓史 (1977年) (すずさわ叢書〈14〉)作者:上田 満男すずさわ書店Amazon 見返しは表紙・裏表紙とも黄緑色の要…

池内紀の中公新書(1)

5月8日付「池内紀「雑司が谷 わが夢の町」(3)に取り上げた中公新書2023『東京ひとり散歩』は、2007年と2008年の2年間「中央公論」に連載した「足の向くままいちにち散歩」を中心に纏めたものだった。――この頃、池内氏は「中央公論」に持っていた連載を、…

小谷野敦の新書(1)

私は小谷野敦(1962.12.21生)の著書はブログや Twitter の延長のような感じで大体面白く読んでいる。ミステリーファンから酷評されていた『このミステリーがひどい!』も、どうも探偵小説を手にする気になれない(2時間ドラマなど映像化されたものは見てい…

芥川龍之介「尾生の信」(11)

一昨日からの続き。 ・『荘子』雜篇盗跖第二十九(3) 「盗跖篇」には「一」孔子と盗跖の問答の他に2話「二」子張と満苟得の問答(115~123頁)、「三」无足と知和の問答(124~133頁)が収録されている。その「二」にも、似たような文脈で尾生が持ち出され…

芥川龍之介「尾生の信」(10)

昨日の続き。 ・『荘子』雜篇盗跖第二十九(2) 友人の柳下季の弟・盗跖を正道に戻そうと、柳下季の止めるのも聞かずに顔回と子貢を供に連れて盗跖の許に出向いた孔子が、しょうもないおべんちゃらを言って盗跖を怒らせ、十倍返しくらいの反論を喰らって逃…

芥川龍之介「尾生の信」(09)

・『荘子』雜篇盗跖第二十九(1) 「孔子倒れ」の語源となった(?)盗跖と孔子の問答に、尾生が登場する。『荘子』は学部生時代に金谷治訳注の岩波文庫で揃えた*1。 ・岩波文庫33-206-4『荘子 第四冊(雑篇)』1983年2月16日 第1刷発行・1993年10月15日 …

芥川龍之介「尾生の信」(08)

さて、これまで日本で「尾生(の信)」について説明のある書物、寛永六年(1629)刊『春鑑抄』、明治39年(1906)刊『支那奇談集 第二編』、大正元年(1912)刊『〈故事/俚諺〉教訓物語』を見て来た。もちろん、まだまだあるであろう。 7月9日付(06)に見…

芥川龍之介「尾生の信」(7)

人と待合せて、すっぽかしたこともすっぽかされたこともあるが、それも昔の話で、最近は別にコロナでなくても、とんと人と待合せることなんてなかったのだけれども、もっと昔になると私も尾生ぐらいに義理堅かった。と云って、思い出すのは幼稚園に入る前(…

芥川龍之介「尾生の信」(6)

昨日の続き。 ・林道春『春鑑抄』(2) それでは「〇信」の五十五丁裏4行め~五十六丁裏9行め、尾生の話をその前後も含め抜いて置こう。 早稲田大学図書館雲英文庫本から文字起しして奈良女子大学学術情報センター本で校正した。仮名抄の版本の片仮名には異…

芥川龍之介「尾生の信」(5)

さて、7月6日付(3)に見た近事畫報社の『支那奇談集 第二編』の「尾生の信」で上げ汐で溺れ死んだことになっていることが、私にはどうにも腑に落ちない。 原文は、これから色々見るつもりだけれども、いづれも馮夢龍『情史』程度の短いものである。だから…

芥川龍之介「尾生の信」(4)

さて、ロマンチックでない私は、来ない人を待ち続けたような経験も、あったようななかったような、なかったと書くつもりが、よく考えて見るとあったのだけれども、それよりも、私が行かなかったことの方が多かったのである。 事情は様々である。しかし、携帯…

芥川龍之介「尾生の信」(3)

昨日の続きで、芥川が参照したらしい『支那奇談集 第二編』の「尾生の信」を見て置こう。3頁ある「目次」に拠れば58篇を収めるが、その43番め、3頁上段5行めに「尾生の信 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥二二九」とある。 229~231頁「 尾 生 の 信 *1」、題は3行取り4字…

芥川龍之介「尾生の信」(2)

・岩波文庫31-070-15(2) 昨日「違和感」があるので「手にしていない」と書いた岩波文庫だが、勤めの帰りに図書館に立ち寄ったら棚にあったので借りて来た。刊年月日・定価・頁数は昨日の記事に追加して置いた。 カバー表紙の紹介文は以下の通り。 隅田川…

芥川龍之介「尾生の信」(1)

・岩波文庫31-070-15『蜜柑・尾生の信 他十八篇』2017年5月16日 第1刷発行・定価600円・221頁*1 蜜柑・尾生の信 他十八篇 (岩波文庫)作者:芥川 竜之介岩波書店Amazon 仮に岩波文庫の書影を挙げたけれども、岩波文庫は著者名を「芥川竜之介」としているので…

時雨の思い出(1)

正志が克之と知り合ったのは、高校の入学式のときだった。 正志が入学した高校は、明治創立の旧制中学以来の伝統を誇る、学区トップの進学校である。 猛勉強するのは当たり前で、その上さらに、勉強を愉しむ余裕くらいないと合格出来ない。いや、ガリ勉で入…

長沢武『北アルプス夜話』(4)

昨日の続き。 ・初出誌「信濃路」の謎(?) 復刻版というと、元版の内容を余すところなく再現しているものと、普通思う。頁付を打ち直したり、新たに凡例や解説を加えることはあっても、元版は影印でそのまま収録されているものと思う。 しかしながら、新た…