瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

川端康成『朝雲』(9)

続いて「文學ト云フ事」の予告編について検討するつもりだったのだけれども、動画を再生させながら原作と色々な場面を対照させる余裕がなかったのでしばらく後に回す。 さて、私は当時、緒川たまきや井出薫を見て、憧れのような気分にはなったけれども、それ…

川端康成『朝雲』(8)

・「文學ト云フ事」(4)夜道 名場面はもう1つ、家政科のバザアの帰り、夜道を一緒に歩く場面がある。ここに流れる André Gagnon の “L'eternel retour” も、昨日触れた縄跳びの場面の “Lettre à Clara” に劣らぬくらい、上手く嵌っている。227頁7行め~228…

川端康成『朝雲』(7)

・「文學ト云フ事」(3)縄跳び 昨日の続きで、まづ縄跳びの場面を見て置こう。『川端康成全集』第七卷218頁3~16行め、 冬が來ると學校の庭で繩飛びがはやつた。偶然だらうけれど、私が飛び込んだところへ、あの/方も入つてらした。私の肩につかまつてい…

川端康成『朝雲』(6)

・「文學ト云フ事」(2) さて、菊井先生を演じた緒川たまき(1971.2.11生)は満23歳。 yen-rakuウェブサイト「interzone」の「『文學ト云フ事』アーカイヴズ」の「第17回 川端康成『朝雲』 」の、yen-raku氏の「■所感・その他」には、「内容的には美人教師…

川端康成『朝雲』(5)

・「文學ト云フ事」(1) 25年前の深夜に見たときの記憶はさすがにない。10年前に某巨大動画サイトで予告編部分のみを見た頃までは、少々覚えていたように思うのだが、今となってはもう、動画サイトに上がっているものと、yen-rakuウェブサイト「interzone…

川端康成『朝雲』(4)

今日は一昨日立ち寄ったのとは別の、貸出券を持っている別の市立図書館に行って『川端康成全集』第七卷(昭和五十六年一月二十日發行/昭和五十八年三月 五 日三刷・定價四〇〇〇圓・新潮社・602頁・四六判上製本)を借りて来た。3月24日付(2)に挙げた平…

川端康成『朝雲』(3)

昨日の続き。 当ブログの初期に参照してリンクを貼付したサイトの中には、リンク切れになっているページも少なくなく、その中には移転して存続しているページもあるけれども、跡形もなく消えてしまったページもある。そんな中で最初期の2011年1月1日付「森鴎…

川端康成『朝雲』(2)

昨日上げた下書きには、1行空けて以下の追加があります。これが2017年11月に加筆した分かも知れません。 戦前の高等女学校の教師で、戦中に若くして死んだ文学者に、渡辺直己・新美南吉・中島敦がいる。 祖母が日本橋出身と云う生徒に、私立女子高に孫が通っ…

川端康成『朝雲』(1)

以下は2016年8月22日に書いた下書き*1。朝雲作者: 川端康成出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1946/04/12メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 前置きとして未見だけれども昭和21年(1946)版の書影を貼付して置く。初版は昭和20年(19…

山岸凉子『ヤマトタケル』(7)

2月23日付(6)の続きで上製本と単行本(あすかコミックス)の比較。 上製本は5頁(頁付なし)中扉で灰色地■に、上部中央に明朝体太字縦組み白抜きで標題。6頁(頁付なし)は右下に元は彩色されていたと思しき主人公の、左下を見つつ叫んでいる顔のカット。…

松本清張『砂の器』(12)

昨日の続き。 前回から文体が敬体になっていますが、その日の気分です。 西村雄一郎『清張映画にかけた男たち 『張込み』から『砂の器』へ』では、橋本忍(1918.4.18~2018.7.19)は昭和39年(1964)1月の父の死が切っ掛けとなって、3月19日付(10)に引いた…

松本清張『砂の器』(11)

昨日、西村雄一郎『清張映画にかけた男たち 『張込み』から『砂の器』へ』には、177〜313頁「第二部 『砂の器』、そして『黒地の絵』」210~268頁「第二章 それぞれの旅立ち」227~258頁「橋本忍の場合」の節、7項め、「父をいかにして殺すか」に、橋本氏が…

松本清張『砂の器』(10)

昨日の続きと云うより一昨日の続き。 本作のシナリオを収録するシナリオ作家協会 編『年鑑代表シナリオ集 一九六八年版』について。 本作は「作品解説」の最後に取り上げられている。415頁上段23行め~下段13行め、 特別賞になった『砂の器』は、昭和三十六…

松本清張『砂の器』(09)

昨日の続き。 本作のシナリオが、映画公開の5年前のシナリオ作家協会 編『年鑑代表シナリオ集 一九六八年版』に掲載されているのは、1968年度のシナリオ賞の「特別賞」に選ばれたからだった。これは「同年度の公刊雑誌などに発表された未映画化シナリオの中…

松本清張『砂の器』(08)

野村芳太郎監督映画『砂の器』については、2017年8月8日付(06)に取り上げた樋口尚文『『砂の器』と『日本沈没』70年代日本の超大作映画』の解釈について、それから山田洋次が脚本執筆時のことを何度か回想しているが、その異同についても検討するつもりで…

山岸凉子『黒のヘレネー』(1)

・あすかコミックス・スペシャル『山岸凉子全集』第31巻 ・昭和63年9月17日初版発行・定価490円・237頁 2015年7月21日付「山岸凉子『妖精王』(11)」に引用した、2007年12月01日付の「貸出メモ」の最初に載っていた「1 黒のヘレネー/あすかコミックス…

読売新聞社横浜支局編『神奈川の伝説』(3)

昨日の続きで、大藤時彦「序」及び長田与四郎「はじめに」から、本書の由来について述べた箇所を摘記して置こう。 前者の2頁め(前付4頁め)1~6行め、 このたび読売新聞社神奈川支局で、県下の伝説の一部をまとめ、一冊子に編まれることは、今まで/こうし…

読売新聞社横浜支局編『神奈川の伝説』(2)

昨日の続き。 私の見た上製本は、表紙見返しの遊紙の裏に、太い黒鉛筆による7行の識語がある。 この小冊は高橋三郎君から贈くられ/たものである、川崎については五編しか/ない、 発行早々書店棚で内容をペラペラと/ めくってみて、手を出さなかったしろ/…

読売新聞社横浜支局編『神奈川の伝説』(1)

私は中学時代を横浜市で過ごしたので、横浜には何となく愛着があって、今の職場に移ってからは遠のいてしまったが、以前は年に何回か、横浜開港資料館や金沢文庫の企画展を見に出掛けていたのである。そして今でも、2016年2月23日付「松葉杖・セーラー服・お…

斎藤澪『この子の七つのお祝いに』(1)

1月に Amazon で買物をした際に、間違って「prime をためしてみる」と云うボタンをクリックしてしまった。別に試すつもりもないので解除しようと思ったのだが、既に1ヶ月無料体験会員にされてしまっていた。厄介なことになったように思ったのだけれども、会…

森於菟『父親としての森鴎外』(09)

3月7日付(07)及び3月8日付(08)に引いた、著者歿後、昭和53年(1978)9月刊行の科学随筆文庫25『医学者の手帖』の「観潮楼始末記」追記について。 初出の「台湾時報」は未見。これが戦後、昭和21年(1946)に養徳社から刊行された、森於菟『森鴎外』に収…

卒業式の思ひ出(2)

昨日の続き。 一旦書き終えてしまってからフィギュアスケート選手のことを書き足したのだが、どうも据りが悪いので削除して改めて投稿し直そうかと思ったのだが、今更加筆前の状態に戻すのも面倒なのでそのままにして置く。 先日、平日の昼に勤務先の近所を…

卒業式の思ひ出(1)

私は自分の卒業式のことを余り覚えていない。いや、小学校の卒業式のことは一場面だけ良く覚えているが、思い出したくない。 中学の卒業式のことは、2018年11月15日付「美術の思ひ出(4)」に触れた。式の後、校庭で(生徒の人数が多すぎて、講堂には入りき…

森於菟『父親としての森鴎外』(08)

昨日の続きで、著者歿後刊行の科学随筆文庫25『医学者の手帖』から、追記の後半を抜いて置こう。 追 記 二 前に記した昭和二十九年七月九日、鴎外三十三回忌を期して、観潮楼の跡に「沙羅の木」の死を刻/んだ石面を、明治を偲ぶ赤練瓦造りの「詩壁」にはめ…

森於菟『父親としての森鴎外』(7)

昨日の続きで「観潮楼始末記」の「追記」について、著者歿後の科学随筆文庫25『医学者の手帖』に載るものを抜いて置こう。やはり本文の最後の段落、151頁13行めから引くこととする。加筆箇所は仮に太字とし、違う語句に置き換えた箇所は同じく仮に灰色太字に…

森於菟『父親としての森鴎外』(6)

前回、1月16日付(4)に引いた長沼行太郎「解説 一つの鴎外論」が特に注意していた「観潮楼始末記」の前書きを引用した。この前書きは大雅新書版にはなく、昭和36年(1961)刊行の科学随筆全集9『医学者の手帳』収録に際して追加されたものである。今日は…

森於菟『父親としての森鴎外』(5)

1月16日付(4)の続きで、昭和36年(1961)刊行の科学随筆全集9『医学者の手帳』収録に際して追加されたと云う「観潮楼始末記」の前書きを見て置こう。私の見た筑摩叢書版(13頁2~12行め)ちくま文庫版(26頁2~13行め)そして科学随筆文庫25『医学者の手…

森類『鴎外の子供たち』(5)

・山﨑國紀『鴎外の三男坊 森 類の生涯』(4) 昨日、〈第九章〉の123頁3行め~125頁(5行め)「4 絵画から小説執筆へ――その苦闘」の節、123頁6~8行めに「‥‥。類が、於菟に「小倉日記」/の写しを預け、岩波書店に行ってもらい、その結果を聞きに行った翌…

森類『鴎外の子供たち』(4)

昨日の続き。 ・山﨑國紀『鴎外の三男坊 森 類の生涯』(3) 本当なら頭から順にメモを取りながら読むところなのだけれども、なかなかその余裕がない。だから、風呂上りの湯冷ましなどに読んで、粗方読み終えてしまった。細かいところでいろいろ気になった…

森類『鴎外の子供たち』(3)

昨日の続きで、参考として参照した著者の評伝について。 ・山﨑國紀『鴎外の三男坊 森 類の生涯』(2) 第1版の第1刷と第2刷・第4刷を比較して見た。 異同は奥付の発行日の2行めの追加と、カバー裏表紙の左上の2行、1行めが第1刷・第2刷は「ISBN4-380…