瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

白馬岳の雪女(35)

・遠田勝『〈転生〉する物語』(15)「一」9節め② 昨日の続きで9節め「地名の魔力」の後半を見て行こう。39頁8行め~40頁6行め、 物語は地名をもとめ、地名は物語に魔力を与える。結局、白馬岳の雪女伝説の流布において、青/木の果たした最大の功績――これを…

白馬岳の雪女(34)

昨日の続き。 ・遠田勝『〈転生〉する物語』(14)「一」9節め① 8節め「「雪女」と偽アイヌ伝説」は続いて、これら、ハーン「雪女」翻案と一見判りにくい(だからこれまで指摘されて来なかった)『アイヌの傳説と其情話』の2例と、人名も行文も引き写している…

白馬岳の雪女(33)

昨日の続き。 ・遠田勝『〈転生〉する物語』(13)「一」8節め③ 8節め「「雪女」と偽アイヌ伝説」が紹介する、青木純二『アイヌの伝説と其情話』に載るハーンの「雪女」翻案のもう1例は、15頁12行め~19頁1行め【5】「赤き乳の出る岩」である。36頁1行め~37…

白馬岳の雪女(32)

昨日の続き。 ・遠田勝『〈転生〉する物語』(12)「一」8節め② 前回は前置きだけになってしまったが、8節め「「雪女」と偽アイヌ伝説」に紹介されている、青木純二『アイヌの伝説と其情話』の「雪の夜の白い女」について見て置こう。34頁13行め~35頁14行め、…

白馬岳の雪女(31)

昨日の続き。 ・遠田勝『〈転生〉する物語』(11)「一」8節め① 続く34頁12行め~38頁9行め、8節め「「雪女」と偽アイヌ伝説」にて、遠田氏は青木氏が既に『アイヌの傳説と其情話』にて2話も、ハーンの「雪女」の翻案を行っていた、と指摘する。 青木氏のアイ…

白馬岳の雪女(30)

昨日の続き。 ・遠田勝『〈転生〉する物語』(10)「一」7節め 32頁11行め~34頁11行め、7節め「いたずら者の青木記者」については、8月19日付(23)に述べたように、一昨年秋に取り上げたことがある。青木純二の経歴(02)https://t.co/jV5hAkPmRy遠田勝『…

白馬岳の雪女(29)

昨日の続き。 ・遠田勝『〈転生〉する物語』(09)「一」6節め 30頁13行め~32頁10行め、6節め「バレット文庫の「雪女」草稿」の前半を抜いて置こう。30頁14行め~31頁8行め、 白馬岳の「雪女」伝説が、ハーンの「雪女」に由来するもうひとつ有力な証拠をあ…

白馬岳の雪女(28)

昨日の続き。 ・遠田勝『〈転生〉する物語』(08)「一」5節め 続けて28頁11行め~30頁12行め、5節め「「箕吉」か「巳之吉」か」にて、遠田氏は青木純二が依拠した本文を特定してしまう。この辺りは勿体ぶっていないので読んでいて甚だ気持ちが良い。 28頁12…

白馬岳の雪女(27)

・遠田勝『〈転生〉する物語』(07)「一」4節め② 「一 白馬岳の雪女伝説」の4節め「『山の伝説』」について、昨日の続き。 26頁1~9行め、 なお、この青木純二の一九三〇年というのは、白馬岳の雪女伝説として最古のものであるだけで/はなく、白馬岳という…

白馬岳の雪女(26)

昨日の続き。 ・遠田勝『〈転生〉する物語』(06)「一」4節め① 「一 白馬岳の雪女伝説」の4節め、24頁6行め~28頁10行め「『山の伝説』」にて、ようやく青木純二と『山の傳説』が持ち出される。 24頁7行め~25頁11行め、 一九三〇年以降、長野県と富山県を…

白馬岳の雪女(25)

昨日の続き。 ・遠田勝『〈転生〉する物語』(05)「一」3節め② 「一 白馬岳の雪女伝説」の3節め「捏造された「雪女」伝説」の、前回の引用に続く3段落めを見て置こう。22頁16行め~23頁6行め、 しかし、この調査の目的は、そんな小さな悪戯の告発ではない。…

白馬岳の雪女(24)

昨日の続き。 ・遠田勝『〈転生〉する物語』(04)「一」3節め① 本書「一 白馬岳の雪女伝説」の2節め「原「雪女」をめぐる論争」の最後に引かれている、牧野陽子の旧稿「ラフカディオ・ハーン「雪女」について」(「成城大學經濟研究」第105号89~125頁・198…

白馬岳の雪女(23)

8月14日付(18)の続き。 ・遠田勝『〈転生〉する物語』(03)「一」2節め 白馬岳の雪女を取り上げた「第一部 旅するモチーフ」の「小泉八雲と日本の民話――「雪女」を中心に」については、既に2019年10月18日付「「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(13…

白馬岳の雪女(22)

・黒部市吉田科学館「黒部奥山の昔ばなし」 信州(長野県)では北安曇郡白馬村が「「雪女」の里」を称しているのであるが、越中(富山県)の方でも8月9日付(13)に引いた『富山の伝説』にあるように「黒部で有名な話」と云う扱いなのである。 ・「広報くろ…

白馬岳の雪女(21)

・和田登『民話の森・童話の王国 信州ゆかりの作家と作品』(3) 昨日、和田氏が白馬岳の雪女について「物語としても一級である」と評していることに疑問を差し挟んだのであるが、「白馬は民話で名高い「雪女」の里です」と云う案内板が設置されるくらい、…

白馬岳の雪女(20)

昨日の続き。 ・和田登『民話の森・童話の王国 信州ゆかりの作家と作品』(2) 白馬岳の「雪女」には第2部に登場する松谷みよ子が大きく関わっているのだけれども、本書では、第1部にのみ取り上げられている。 すなわち「第1部 民話編」の「3 妖怪伝説…

白馬岳の雪女(19)

牧野陽子は、ハーン研究家の間に、遠田勝が云うような「雪女」の出典問題をめぐる論争など存在しない、とした。確かにその通りなのだけれども、実は長野県では論争なしに「雪女」は地元の伝承と信じ込まれているらしいのである。 幾つか例を挙げて置こう。 …

白馬岳の雪女(18)

・遠田勝『〈転生〉する物語』(02)はじめに② 前回はハーンの「雪女」について、に終始して白馬岳の雪女には及ばなかった。――「はじめに」が白馬岳の雪女に触れるのはこの次の部分である。4頁12行め~6頁2行め、 ハーンが案じていたとおり、「雪女」という物…

白馬岳の雪女(17)

・遠田勝『〈転生〉する物語』(01)はじめに① それでは、差当り「十六人谷」についての確認が終わったところで、今度こそ7月31日付(04)の続きで、8月1日付(05)に保留にした遠田勝『〈転生〉する物語――小泉八雲「怪談」の世界』の内容を検討して行こう。…

白馬岳の雪女(16)

今回は言い訳と余談に終始するので、当ブログを毎回確認している読者は殆どいないのですが(笑)、何処かで読んだような繰り言ばかりであることを、念のため初めにお断りして置きます。(8月9~10日) * * * * * * * * * * さて、この主題では、7…

白馬岳の雪女(15)

・辺見じゅん「十六人谷」(7) 白馬岳の雪女に関連する話題として、しばらく白馬岳の雪女そっちのけで「十六人谷」を取り上げて来た。 ここで一応の纏めをして置くと、辺見じゅん「十六人谷」は、白馬岳――黒薙川の柳又谷の源流部――の「雪女」を抱き合わせ…

白馬岳の雪女(14)

・辺見じゅん「十六人谷」(6)自筆草稿 今日から遠田勝及び牧野陽子の著書に取り掛かるつもりだったが、辺見じゅん「十六人谷」に関して若干、メモ程度の追加をして置きたい。 ・「高志の国文学館 年報」平成25年度(平成26年11月25日発行・高志の国文学館…

白馬岳の雪女(13)

・大島廣志の「雪女」(1) 8月4日付(08)に、日本の伝説24『富山の伝説』の前半、大島広志・石崎直義「富山伝説散歩」の2章め「黒部」を担当したのは大島氏だったらしいと見当を付けたのだが、4節め「黒部峡谷の怪異譚」の最後(44頁上段6行め~下段12行…

白馬岳の雪女(12)

・辺見じゅん「十六人谷」(5)こわでん① 辺見じゅん「十六人谷」とこれを原作とする「まんが日本昔ばなし」の「十六人谷」について一通りの確認を終えたところで、本題である白馬岳の雪女に話を戻そうと思ったのだが、最近、やはり辺見版を元とするTV番組…

白馬岳の雪女(11)

・辺見じゅん「十六人谷」(4)まんが日本昔ばなし② 昨日触れた「まんが日本昔ばなし〜データベース〜 ­⁃ 十六人谷」のコメント欄には22件のコメントがあるが、2012~2019年の18件は、一部に詳しい分析があるものの、殆どは、内容の怖さを訴えるものが多か…

白馬岳の雪女(10)

・辺見じゅん「十六人谷」(3)まんが日本昔ばなし① 昨日の続き。 遠田勝の「科学研究費助成事業 研究成果報告書」に見える「まんが日本昔ばなし」で「十六人谷」が取り上げられたのは、「まんが日本昔ばなし〜データベース〜 ­⁃ 十六人谷」に拠ると昭和58…

白馬岳の雪女(09)

・辺見じゅん「十六人谷」(2) 昨日の続き。 辺見じゅん(清水眞弓。1939.7.26~2011.9.21)の「十六人谷」が従来の十六人谷伝説と大きく異なっているのは、生還者(弥助)に「けっして人に言うてはならん」との禁忌が課されることである。そしてそれが、…

白馬岳の雪女(08)

・辺見じゅん「十六人谷」(1) ここで「十六人谷伝説」に関する民俗学者・国文学者の見解を紹介しても良いのだが、そうするとさらに回り道が長くなる。それに本題の「雪女」にも大いに関わって来る問題なので、余りこちらを先回りして進めてしまうと具合が…

白馬岳の雪女(07)

・野崎雅明『肯搆泉達録』(2) 昨日の続き。 国立国会図書館デジタルコレクションの明治25年(1892)刊富山日報社版活字本の前付(頁付なし)3~5頁は岡田英之「肯搆泉達録序」で「文化乙亥春二月」付、「緒言」の内容及び文化12年(1815)成立はこれを根…

白馬岳の雪女(06)

「十六人谷伝説」の件は、全て後回しにしても良いのだけれども、そうするといつのことになるか分からぬので、昨日見た「科学研究費助成事業 研究成果報告書」に、若干の註釈を加えて置こう。 ・野崎雅明『肯搆泉達録』(1) まづ野崎雅明(1757~1816)の『…